タクミシネマ         姉のいた夏、いない夏

 姉のいた夏、いない夏      アダム・ブルックス監督

 1960年代、世界中の若者たちが動いていた。
大学には変革を求める学生たちが集まり、街では警察と追いかけっこが行われていた。
アメリカでも同様で、若者たちが生きる何かを求めて、熱い議論が闘わされていた。
またその過程で傷つき、ドロップアウトする者もいた。
この映画の主人公フェイス(キャメロン・ディアス)も、そんな熱い時代に生きる若者の一人だった。

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前宣伝のビラから

 フェィスは両親の愛情に恵まれ、何不自由することなく育った。
1969年に高校を卒業すると、父親の遺言にしたがって、彼女はヨーロッパに旅立つ。
人生の見聞を広めてこようと言うわけである。
変革を求めていた彼女は、ヨーロッパで赤軍の兵士になる。
しかし、闘争の意志があやふやだったので、赤軍の闘争で死者がでたことから、彼女は動揺してしまう。
銀行強盗や爆弾闘争は良いが、市民を爆弾の巻き添えするのはいけないと言う倫理である。
実に甘い闘争者だった。

 自分の運んだ爆弾で死者がでたので、彼女は赤軍から離れ、恋人クリストファー(クリストファー・エクルストン)と傷心の旅にでる。
そして、ポルトガルの最果てで、恋人の眼前から、海へと投身自殺してしまう。
残された恋人は、苦悩と困惑の極みに突き落とされる。
もともと彼は、彼女の政治闘争には反対だった。

 しかし、彼女を温かく見守っており、今回も傷心の彼女に付き合ってきた。
政治闘争のことは、家族には知らせるなと厳命されていたので、彼女の死亡だけしか知らせることができない。
そのうえ、彼女の死を止められなかった自責の念にもかられる。

 1976年、母親が再婚したいというのをきっかけに、フェイスの妹フィービー(ジョーダナ・ブリュースター)が、ポルトガルで死んだ姉の足跡を訪ねる旅にでる。
アムステルダムからパリにはいって、クリストファーと会う。
そこで一部始終を知らされ、ポルトガルへ行くことにする。
クリストファーも同行することになる。
最初二人は別の部屋を取っていたが、やがて肉体関係ができる。
二人は恋人のようにふるまい、性の快楽を追求しながら、姉フェイスの足跡を辿る。


 この映画は、1968年のフランス5月革命前後の、熱い時代に浮かれた若者を批判したのか、そのあとのしらけた世代の主張なのか、何が言いたいのかよく判らなかった。
五月革命の実態は金持ち先進国の若者が、生活に困ることがないという前提にのって始めた、一種の贅沢な運動だった。
もちろん贅沢な運動だったから、無意味だと言っているのではない。

 5月革命は、今日につながる大きな問題をたくさん提起しており、今でもそれは考察され続けている。
だいたい生活がみたされなければ、生きる意味など考えはしない。
日々に生きるのに汲々としていては、哲学など思いつきもしない。
本当の貧困からは、革命などおきはしない。
だから贅沢な運動だというのでは、批判したことにはならないのだ。
この映画では、フェイスの思想探しがじつに安直に描かれている。

 おそらくこの映画の監督は、70年世代の人間を追ったのだろう。
劇場プログラムを見ると、監督は1956年生まれとある。
監督の生きた時代と、描かれた時代はちょうど合う。
この映画は、政治の季節が終わった時代に青春を送った監督の、熱き時代への精一杯の理解なのだろう。


 後の時代になると、すべてが細分化され、部分部分で評価される。
学生運動は良かったが過激派がいけなかったとか、熱い心は良いが暴力はいけないなど、切り刻まれるのが歴史である。
しかし、部分部分に分けることができないのが、時代であり歴史なのである。
学生運動も暴力を許容していたから、根元的な思想の点検ができたのだ。
部分の否定は意味がない。
部分を否定することによって、歴史からみずみずしさを奪ってしまう。

 母親ゲイル(ブライス・ダナー)が、とても美人なのに、娘はひどい不美人である。
とりわけ長女役のキャメロン・ディアスはもう本当にブスで、あんな美人の母親からと不思議なくらいである。
それに次女のフィービーはまだ良いとしても、ヒスパニック系の顔立ちで母親とはまったく似ていない。
やはり家族であれば、何となくでも似ている俳優さんをキャスティングして欲しい。
全体に話の作りが安直である。

 フジのフィルムを使っていたが、露出オーバーで飛んでいるシーンがあったり、全体に発色が悪かった。
この映画はコダックを使ったほうが、あっていたように思う。
原題は「The Invisible Circus」

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