タクミシネマ        ランダム・ハーツ

ランダム ハーツ    シドニー・ポラック監督

 ハリソン・フォードとクリスティン・スコット・トーマスが主演する恋愛映画だが、ハリソン・フォードが老人化していて、彼には恋愛映画はもう無理である。
もともと活劇俳優として有名になった彼には、ラブシーンが似合わない。
そのうえ加齢が彼から肉体的な滑らかさを奪い、裸になって男女の絡みを演じるには精気を感じないのである。
ハーベイ・カイテルやブルース・ウィリスなどの高齢者も、ベッドシーンが登場する恋愛映画は無理である。
高齢者にもできる役はあるのだから、他の役作りをすべきだろう。

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前宣伝のパンフレットから

 ダッチ(ハリソン・フォード)はワシントンDC警察の内務調査室に勤務する刑事であるが、彼の奥さんペイトン(スザンナ・トンプソン)は仕事だといってマイアミに出かける。
同じ時、下院議員ケイ(クリスティン・スコット・トーマス)の夫カレンも、仕事だといってマイアミに出かけた。
ペイトンとカレンはチャンドラー夫妻と名乗って、一緒に飛行機に搭乗したのだが、その飛行機は事故を起こしてチェサピーク湾に墜落した。
ダッチもケイも、伴侶が不倫をしていたとはつゆ知らず、飛行機が墜落したことによって、二人の行動が明るみに出た。

 ペイトンを信じ切っていたダッチは調査を始めるが、彼女の不倫は事実であり、すでに一年以上続いていることが判明する。
ケイにも調査の協力を頼む。
下院議員から上院議員への転出を考えていた立場上、夫の不倫を知らなかったではすまない。
格好のスキャンダルである。
そのため、初めは協力を拒んでいたケイだが、ダッチの強引な行動に態度を軟化させ始める。
互いに連れ合いを失った者同士で共感するところがあり、二人は結ばれるが、最後にはそれぞれの道へと進んで行くところで映画は終わる。

 両方とも既婚者の不倫は、いかにもありそうな話である。
しかも、不慮の事故によって、それが明るみに出る。
それもありそうな話である。
しかし、カレンが密会のためのアパートを持っていたり、完全な二重生活をするのはちょっと無理じゃないだろうか。
カレンやペイトンには、生活じみた不倫を続ける必然性があるのだろうか。
不倫は生活臭がないから成立するのだろう。

 人間の行動はそれほど器用にはできておらす、ああした二重生活が長続きするはずがない。
それを不問にしても、ダッチとケイが結ばれるのは理解不能である。
ダッチは刑事、ケイは下院議員だから、肉体派とサービス業で人間の資質が違いすぎる。
二組の不倫が予期せぬ飛行機事故で発覚するという話は、物語の出発点としては理解できるが、映画全体の流れが不自然である。
シドニー・ポラック監督自身も、ケイの選挙ブレーンとして出演しているが、彼の演出はすでに古い感じがする。

 登場人物の名前が出てくる映画の冒頭、飛行場でタクシングする飛行機や離着陸する飛行機を低いアングルでとらえた画面は、物語の導入としてその後の展開を期待させて良かった。
しかし、全体に顔のアップが多く、しかも会話する人間を交互にアップで撮っている。
撮影に工夫がない。色がとんだ画面があったりアンダーの画面があったりと、露出も一定していない。
撮影は「リバー・ランズ・スルー・イット」を撮ったフィリップ・ルースロだが、自然の風景など美しい画面もありながら、定型的な画面構成で平凡である。

1999年のアメリカ映画。


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