タクミシネマ        ノイズ

ノイズ            ランド・ラビッチ監督

 話はきわめて簡単である。宇宙飛行士スペンサー(ジョニー・デェプ)が船外作業中に事故に遭う。
そのとき2分間ばかり交信が途絶えるのは、宇宙人が彼に乗り移ったためで、それが原因で彼は別人になった。
無事に帰還するが、彼の奥さんジリアン(シャーリズ・セロン)は彼の子供ではなく、宇宙人の子供を身籠もる。
夫ではない生物の子供、しかも双子を身籠もった女性の恐怖を描く映画である。
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 スペンサーと同じ行動をしたもう1人の宇宙飛行士は自分も死ぬし、不可解な言葉を残して奥さんも死ぬ。
先に死んだ夫婦の後を追うのかと、ジリアンは不安になる。
そこで、スペンサーがどんな人物なのかを、疑心暗鬼のうちに謎解きをする。
謎が解けたところで大騒動がおき、宇宙人はスペンサーから抜けだし、寄生されていたスペンサーは死んでしまう。
そして、彼に潜んでいた宇宙人が、ジリアンへと乗り移る。

数年後、2人の子供を出産したジリアンは、再婚し平和な家庭を営んでいる。
彼女も2人の子供も、何だか異常な雰囲気である。
宇宙人が体内に潜んでいるのを感じさせたまま、映画は終わる。

 予告編などで得た、2分間という予備知識をもって見ているので、物語の展開は読めるが、なかなか話が始まらない。
映画が半分くらいすぎても、依然として何が言いたいのか判らない。
ただ2分間というだけである。
2分間の謎が解明されるのかと思うと、最後にちょっとでてくるだけで、何だか興ざめである。
しかも、スペンサーからジリアンに乗り移った宇宙人は、その後もしっかりと生き続けるような顛末だが、なぜ宇宙人がジリアンに潜んだままなのかよく判らない。
2分間という交信の断絶を設定したのは了解するとしても、宇宙人が宇宙飛行士に乗り移った理由がよく判らないし、なぜ地球に来たのかも判らない。
その後、宇宙人は何の活動もしないのだから。
また、宇宙人の子供が成長するのもよく判らない。

 ジョニー・ディップがでているので、宇宙飛行士の彼が主役かと思うと、この映画の原題は、「The astronaut's wife」で、ジリアンが主役なのである。
しかも邦題では、「ノイズ」となっており、主役の切り替えに戸惑うし、何が主題なのだかよく判らない。
ネームバリューの低いシャーリズ・セロンでは、映画が売れないかも知れないが、やはり映画の主題というか作られた狙いどうりの題を付けるべきだろう。
見終わって調べてみてやっと判るような宣伝は良くない。

 宇宙人に乗り移られた後の、ジョニー・ディップの硬質な演技はよかったが、乗り移られる前の和やかな彼との落差が小さかったので、硬質な演技の効果があまり発揮されていなかった。
この映画では、むしろシャーリズ・セロンの演技を誉めるべきである。
初々しい新婚の若妻が、徐々に恐怖にかられていく。
その様子が上手く演技されていた。
独特の顔をした女優さんで、美人と言えるのだろう。

 やや平面的ながら、絵画的な構成をみせる画面は、ライティングの効果をよく使っていた。
動きの止まった画面としてはその狙いを肯首できるが、動いているべき映画としてみた場合、画面の美しさは動いているものであってほしい。
お金をかけた映画だが、結局何をいいたかったのか、よく判らない映画だった。

1999年のアメリカ映画。


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