タクミシネマ        エニイ・ギブン・サンデー

エニイ ギヴン サンデー    オリバー・ストーン監督

 アメリカン・フットボール、この道30年。
すでに歳はいっているが、トニー(アル・パチーノ)は今でもマイアミ・シャークスのヘッド・コーチである。
若い選手が次々に登場してきて、今までのやり方では、なかなか勝てなくなってしまった。
彼自身と彼の愛弟子である選手たちも、そろそろ年齢を感じてきた。
看板選手のジャック(デニス・クエイド)が、怪我をして出場できなくなってしまった。
ピンチヒッターで登場したウィリー(ジェイミー・フォックス)は、優秀な選手だが自分勝手だった。
しかし、連敗中だったシャークスは、彼の活躍で勝利をものにする。
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 アメリカン・フットボールとてチームプレイである以上、仲間の支えがあって成り立つのだ。
しかも、チームの要であるクォーター・バックというポジションは、チームメイトに信頼されてこそスターになれる。
ウィリーの勝手な行動は、仲間の離反を招いた。
トニーは、自己犠牲という古い倫理観をウィリーに教える。
この映画は、新世代の登場を背景に、世代交代を軸にしながら、男性たちのアメフトへの取りくむ情熱を描く。

 フットボールの選手になるのは、ノータリンの男性がすることだという常識があり、優秀な男性や女性は弁護士や医者になるのがアメリカである。
肉体労働の典型であるフットボールの選手は、もはや花形職業ではない。
むしろ貧しい階層から、成り上がる舞台ですらある。
この映画でも、ウィリーは大卒ではなく、大卒のガールフレンドに頭が上がらない。

しかし、男性臭い世界を正面から描くことによって、この映画は無言のフェミニズム批判になっている。
つまり、頭脳へと特化する現代社会への批判である。
肉体と頭脳が一体となったフットボールという男性の世界に、非力な女性は何を対置するのだろうか。
肉体のない頭脳はない。
この映画は、そう問うているようですらある。

 花形選手だったジャックが肉体の衰えを感じて、引退を決意する。
それを奥さんに相談すると、奥さんはまだ二・三年は働けると、手厳しい返事である。
満身創痍になってフィールドを駆け回る男性と、その男性の稼ぎで優雅な専業主婦におさまっている女性。
女性たちは、働き続ける男性を手玉に取るように行動する。
肉体が勝負の世界では、男女の腕力差が露出し、男女の平等がかすんでしまう。
もちろん、男女の平等は社会的なものであり、肉体という個人の次元では男女に差があるのは当然である。
個人的な性別による違いが、社会的な性差に結びつかないというのが、フェミニズムの主張であり、情報社会の男女のあり方である。
それはまったくそのとうりだが、頭脳が肉体の上にある以上、肉体を無視するわけにはいかないのだ。

 「プラトーン」や「JFK」などの大作をとってきたオリバー・ストーンが、今回は地味な主題に取り組んでいる。
世代交代という地味な主題だが作りは大規模で、大勢のエキストラを使った大型映画の手法である。
トニーのオーバーな演技、アップの多用、短いカット割りなど、特徴的な映像である。
しかし、世代交代という主題が、この手法にあっているかはちょっと疑問である。
この主題には、もう少しじっくりとした展開のほうが、良かったようにも感じる。
現代的な映画表現は、力まず自然な演技を良しとしているはずで、地味ながら現代的な主題には、映画全体の作りがやや古いようにも感じた。

 それにしてもアメリカン・フットボールとは、つくずく男性のものだと思う。
屈強な肉体、男性の中でも選りすぐりの屈強な男性たちが、ものすごい音を立ててフィールド上で激突する。
飛び散る汗や血、ときには目玉が飛び出すほどの衝撃。
過激なまでの激突に、大怪我も多発する。
しかも、それは完全に様式化されたスポーツなのである。
それは映画のなかに何度も挿入された、ローマ帝国での競技になぞらえて表される。
あの時代、女性は市民ではなかったのだ。

 暴力的な肉体の衝突は、特別に怪我をしなくても、試合毎のぶつかり合いが、徐々に肉体を痛めていく。
長い選手生活で身体が壊れ、やがて全身に変調をきたす。
それでも試合にでる男性たち。
そしてその中での、世代交代。
トニーは歳をとっても、歳なりに生きていくことを若い世代から学ぶ。
それは色白のマシュー・モディーンが演じた医者が、ジェームス・ウッズの演じたマッチョな医者より、肯定的に描かれていたことでも判る。
中年から高年になってきたオリバー・ストーンの実感が、この映画を撮らせたような感じすらした。
マイアミ・シャークスの真っ黒いユニフォームが格好良かった。

1999年のアメリカ映画。


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