タクミシネマ        プラクティカル マジック

プラクティカル・マジック     グリフィン・ダン監督

 アリス・ホフマンの原作をもとに映画化された。
しかし、「テーマは喪失感と違和感です。ヒロインたちは幼少から疎外感を味わってきた。無視され、陰口を叩かれ、いじめられたり…。そんな孤立体験が、二人が抱える諸問題の大きな原因です」という彼女の主張とは違って、映画はある種のフェミニズムの主張にそったものになっている。

プラクティカル マジック 特別版 [DVD]
劇場パンフレットから

 海に面した小さな街の高台に、大きなオーウェンズ家の家が建っていた。
そこには妙齢の二人の女性ジェット(ダイアン・ウィースト)とフランシス(ストッカード・チャニング)が住んでいたが、彼女たちは普通とは少し違っていた。
何しろ、魔女なのだ。彼女たちは魔法も使えるが、彼女たちと恋に落ちた男性は若死にしてしまうという宿命を負わされていた。
そこには、両親を失った二人の姪サリー(サンドラ・ブロック)とジュリアン(ニッコール・キドマン)が一緒に住んでいた。

 サリーは少しブスイが、真面目で堅実。
素敵な男性を見つけて、恋におちいり幸せな家庭をつくっている。
しかし、魔女の宿命は無情にも、旦那を天国へと連れていってしまう。
その後は、このオーウェンズ家で子供を育てている。
それに対して美人のジュリアンは、セックス大好きの超軟派。
家を出た彼女は、逞しい男性と奔放な生活をしている。

 ジュリアンは男性から男性へと渡り歩くが、とうとうとんでもないマッチョ男のジミー(ゴーラン・ビスンジック)につかまってしまう。
彼は多くの女性をものにした後、女性の体に焼き印を押したり、殺したりしていた。
一度はジミーに惚れ込んだジュリアンも、殴られて殺されかかっていた。
ジュリアンに助けを求められたサリーは、彼女を助け出すが、ジミーに反逆されて、二人とも危ない目に遭う。
そこで魔法の睡眠薬を飲ませたつもりが、どうしたことかジミーは死んでしまう。

 心の底ではジミーを愛しているジュリアンは、何とか彼を生き返らせようと、サリーを説得。
二人は魔術でジミーを生き返らせるが、ジミーはまた乱暴をはたらく。
サリーはジュリアンを助けるために、ジミーを殺してしまう。
ジミーを庭に埋めるが、霊がオーウェンズ家のまわりにとどまり、死体を埋めたところからは季節外れのバラが咲く。
やがて、ジミーの捜査にエイダン(ゲイリー・ハレット)がやってくる。

 ジミーの霊はジュリアンにとりついて、この世に戻り、ジュリアンを苦しめる。
エイダンはサリーの供述に不審を持つが、サリーに恋をしてしまう。
そして、オカルトチックな現象を前に、二人が魔女だと確信するが、サリーに恋したエイダンは彼女の殺人容疑を問わない。

 ジュリアンにとりついたジミーの霊を取り除くために、二人の叔母は女性の力を結集せよと言う。
サリーの友だちたちが箒を持って集まり、箒で作った結界のなかにジュリアンをおき、女性の魔力をジュリアンに集中する。
すると頑固な霊も、とうとう退散して灰になる。
そして、エイダンが再来してサリーと結ばれ、映画はハッピー・エンドで終わる。

 前半は、二人の叔母の魔女にまつわる話や、サリーやジュリアンの生い立ちなど、説明的な場面が連続し少し退屈だが、中盤からは前半の話に乗って上手く展開し始める。
ダイアン・ウィーストとストッカード・チャニングの演じる二人の叔母がとてもいい雰囲気で、子供たちへの無限の愛情と自立心の涵養を上手く演じていた。

 しかし、文学の香り豊かだった原作とは異なり、映画は女性の自然的力の賛美に終始してしまい、まったくのおとぎ話になってしまった。
女性は常に男性の犠牲者であり、横暴でろくでなしの男性に惚れ込んでしまった女性は不幸に陥る。
それを救うのは、女性たちの魔法の力だと話がつながる。
女性が男性と結婚しなければ、生きていけなかった時代ならいざ知らず、今日では女性は男性と同じ経済力を持っており、なにも男性との恋に憧れる必要はない。

 男性との恋を賛美していながら、女性は恋の相手である男性の被害者だという構造は、初期フェミニズムの使った論法だが、これはもはや通じない。
恋を賛美するのは良いが、男性批判だけではなく、女性が自立した新たな関係を模索して欲しい。

1998年のアメリカ映画


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