タクミシネマ        マイ・スウィート・シェフィールド

マイ スウィート シェフィールド    サム・ミラー監督

 イギリスの地方都市シェフィールドでの話。
定職に就いていないレイ(ピート・ポスルスウェイト)が、仲間の男たちと鉄塔の塗装を請け負う。
九月まで送電されてないから、その間に250本の鉄塔を塗装するのである。
電力会社の社員らしい発注者のグレイも怪しげだが、
保険も何も掛けることができないほど金のない電力会社で、レイたちは日雇いである。
そのギャラが良いので、彼等は喜んで引き受けるのだった。

 レイの仲間は、一緒に住んでおり息子のようにかわいがっているスティーブ他の五人である。
レイとスティーブはクライマーである。
そこへバックパックで、世界を放浪しているジェリー(レイチェル・グリフィス)という若い女性が加わる。
ジェリーもクライマーで、世界を放浪しながら岩登りをやっている。
だから、高いところはお手のもので、彼女も加わって仕事が進むうちに、レイとジェリーが仲良くなる。
親子ほども歳の違う二人で、しかもレイには前妻リンと子供がいる。

 歳からすれば、スティーブと仲良くなっても良いはずのジェリーだがレイとできてしまい、なんとレイは結婚しようと言い出す。
どうもこの映画よく判らないのだが、年齢の離れた二人が恋に陥ることは良いとしても、
なぜ結婚させなければならないのだろう。
放浪者のジェリーに惚れるレイは、年寄りの冷や水だとしても、ジェリーのほうが良く判らない。
スティーブはインドへと旅立っていく。
シェフィールドと言う街が、不況で貧しくどうにもならない様子はよく判るが、
レイとジェリーが裸で水浴びするシーンと言い、
映画作りがセンチメンタルな感情に流れているように感じる。

 レイを演じたピート・ポスルスウェイトは、「ブラス」などでも好評を博した。
彼は今やイギリスを代表する役者だから、この映画はそれなりに力の入った企画だったのだろう。
しかし、主題がいまいち鮮明に感じられず、この映画を通して、監督は何を言いたかったのかよく判らなかった。
普通に考えれば、レイの行動は廻りを思いやらず、まったく子供じみているように感じる。

 年齢の離れた二人の恋を否定するつもりはないが、歳がいっていることはそれなりの分別があっても良さそうである。
ところが、ジェリーが再び放浪へ出るところで、映画が終わるのは何だか理解を超えていた。
ジェリーを演じたオーストラリアの俳優レイチェル・グリフィスも、役柄から言えばすでに年齢が行きすぎである。
放浪する彼女は20代前半の設定だろうが、
すでに30を越えているだろうから、肉体的な張りが落ちている。
彼女はスタイルの良い身体ではあるが、お尻の肉がたるんでおり、青春物を演じるのはもう無理である。

 時代設定が説明されてなかったので、何時の話か判らないが、現代物だろうと思う。
元気のよくなったイギリスだが、地方に行けばまだまだ景気が悪いのかも知れない。
彼等が食事をとるシーンが何度かあったが、草の上に直接腰を下ろさず、全員が椅子をもってきていた。
やはり近代が浸透した国の人間は、庶民であっても野原で椅子を使うのかと驚いたが、
近代化の普及は大地から身体が離れることだ、という僕の説が立証されているようで嬉しかった。
二人の結婚祝いに、鉄塔をピンクに塗るのは、微笑ましくてよかった。
原題は「among giants
1998年イギリス映画。


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