タクミシネマ        レッサー・エヴィル

レッサー エヴィル   デヴィッド・マッケイ監督

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レッサー・エビル [DVD]

 小粒の映画ながら、力の入った作品だった。
雨の中で行われている、葬儀の場面から映画は始まる。
棺の中には、自殺した高校の時の同級生が入っている。
しかし、それが誰だか判らない。
その謎解きでもある。

 仲の良かった四人組アイビン、ジョージ、フランク、デレックが、高校二年の時に、ひょんなことから二人の人間を殺してしまう。
そして、証拠隠滅のために車ごと湖へ投げ込む。
殺した相手は得体の知れないギャングで、50万ドルという大金をもっていた。
しかし、それを誰にも知られずに、四人だけの秘密にして学校を卒業し、それぞれ社会人になっていく。
後味の悪い事件だったので、その後の彼等は没交渉である。

 22年たったある日、四人のうちの一人アイビンのところへ、一丁の拳銃を持った刑事がやってくる。
それはアイビンが、高校生の時に買った拳銃で、それでジョージがギャングを殺したのだった。
22年たって湖の水を干したときに、車と一緒に発見され、殺人事件の鍵を握るものとして、刑事が捜査を始めたのである。

 殺人に時効はない。
逮捕の危険を感じたアイビンは、あわてて四人を召集する。
四人がアルビンの山小屋に集まって、高校生当時の思い出を絡めながら、善後策を検討するのがこの映画の見せ場である。
地元で山林業を営むアルビン、警官になったフランク、弁護士のジョージ、牧師になったデレックへと四人は成長していた。

 実際に拳銃の引き金を引いたのはジョージだが、その後で証拠隠滅を計ったのは全員だったし、虫の息だった一人にとどめを刺したのはフランクだった。
四人はいずれも共犯であることは間違いない。
しかし、ジョージは四人の会話をテープにとり、司法取引をして自分だけ刑務所にはいることを逃れようとする。
それを許さない三人は、ジョージを椅子に縛って、小部屋に幽閉する。
アルビンが遺書を下書きしジョージに自殺させ、罪をかぶせようとする。

 警官になったフランクが射殺するように言われるが、彼は殺人を拒否。
かわって牧師のデレックがジョージを射殺しに、ジョージを拘禁してある部屋に行く。
銃声が一発。
慌てて残りの二人が、小部屋に行くと、もう一発の銃声。
映画はここで一つの山を越える。
画面はその次には、最初の葬儀の場へと戻る。
ジョージは殺されておらず、ジョージがいる。
実は遺書を下書きしたアルビンを、自殺に見せかけて殺したのだった。

 この映画は、筋の運びが非常に上手い。
伏線が上手く張られて、最後へとよどみなく盛り上げていく。
四人の性格も、高校生時代から描きこんであるので、22年後の人間像でも自然と納得できる。
ジョージを殺すにしても、ジョージの高校生時代の性格を背景にして、自分だけ助かろうとする姿勢を打ち出しながら、アルビンの借財もさりげなく描いておく。
後から考えると、ジョージを殺すよりアルビンを殺した方が、ずっと自然であることも判る。

 タイトルにあるように、より少ない悪と言うことで、死んでしまったギャングはさておき、現状を壊さないように始末を付ける。
その中での殺人である。
現状を混乱させてまでも、22年前の殺人事件を蒸し返すことの是非。
その後始末のための、自殺を装った殺人。
この主題に関しては、意見が分かれるところで、もう少し主題自体を丁寧に描きこんで欲しかった。

1998年アメリカ映画。


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