タクミシネマ       恋におちたシェイクスピア

 恋に落ちたシェークスピア     ジョン・マッデン監督

 「ロメオとジュリエット」が書かれる舞台裏を、シェクスピア自身の恋愛劇と重ねて、かつて小説化された。
それを映画化したもので、この映画は今年のアカデミー賞で七つのオスカーを取っているが、映画化権をとってないと裁判になっている。
恋におちたシェイクスピア [DVD]
劇場パンフレットから

 1593年、ウィリアム・シェークスピア(ジョセフ・ハインズ)は、脚本が書けなくて呻吟している。
前借りまでしているが、すでに開場は間近である。
書けない相談に、占い師のところへ通っていると言うのも面白い。
精神分析のカウンセリングである。
とにかく喜劇「ロメオと海賊の娘エセル」を書き始めるが、ペンが進まない。
そんなとき、舞台の上で台詞をしゃべっていた若者ヴァイオラ(グウィネス・パルトロウ)を見る。
その若者は、女性が変装していたもので、貴族である彼女は大の舞台好き。
しばしば劇場に来ていた。

 その彼女に、シェークスピアは恋をしてしまう。
彼はしがない脚本家、相手は貴族の娘である。
その二人が恋に陥るのである。
身分が違う彼等が結婚することはないが、恋は身分を越える。
しかし、誰にも言えない忍ぶ恋である。
その辛い気持ちがシェークスピアに、脚本を書くエネルギーを与える。
喜劇という最初の構想はどんどんと変わり、最後には「ロメオとジュリエット」になってしまう。
その途中では、ライバルの劇場主との抗争があったり、ロメオを演じていたヴァイオラが女性であることがばれて、劇場が閉鎖されてしまったり、ライバルの劇場主に助けられたりと、いくつかのエピソードを交えて映画はすすむ。

 最後は、貴族の娘はやはり貴族に嫁いでいくシーンで終わる。
夫になる男性と彼女はエリザベス女王のまえで、劇で本当の恋が描けるかを賭けていた。
それがこの「ロミオとジュリエット」が絶賛されたので、女王の判定は描けるという裁定である。
夫になる男性から50ポンドを彼女は勝ち取って、シェクスピアに与えて心残りのまま夫と立ち去っていく。

 豪華な衣装、凝ったディテール、丁寧なセットと、映画作りにかける情熱はなかなかである。
羽ペンで脚本を書くシェークスピアの爪が汚れていたのもリアルだったし、薄汚れた人々もよかった。
建物、特に石だろうと思われる部分が、ちょっと張りぼてっぽかったが、それを差し引いても入念で凝ったセットだった。

 この映画でグウィネス・パルトロウは、主演女優賞を受賞したが、むしろ見るべきはエリザベス女王を演じたジュディ・ダンチであろう。
凄まじいまでの存在感で、画面を圧倒した。
他にも、ヘンズローを演じたジェフリー・ラッシュのメイクのつくりなど、実に入念だった。
二人の恋が、肉体関係を強く指向していたのは、当然の事ながら微笑ましかった。

1998年のアメリカ・イギリスの共同製作映画


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