タクミシネマ        I love ペッカー

I love ペッカー       ジョン・ウォーターズ監督

 ボルティモアに住むペッカー(エドワード・ファーロング)は、大の写真好き。
身の回りの風景や人々を手当たり次第に写しまくる。
母親にもらったぼろカメラで撮った写真が、画廊の女主人ローレイ(リリ・テイラー)の目にとまり、ニューヨークで個展を開くことになった。
恋人や家族などを撮っていたが、無名のうちは許された撮影も、有名になっていくに従って、さまざまなとばっちりがでてくる。

 ピンぼけや露出があってない写真でも、現代美術から見ると、優れた写真に見える。
現代の判らない美術へのいくらかの皮肉を込めて、ペッカーの写真があれよあれよと言う間に有名になっていく。
ニューヨークでの個展から、ヴォーグへの掲載。
ホイットニー美術館での展覧会など、現代の出世コースを見せるが、現代美術は庶民の日常生活とはまったく関係ない。
労働者の街ボルティモアは、ニューヨークから来た現代美術ファンには、力強いアフリカの民族芸術のようにでも見えるのだろか。
そのちぐはぐさを皮肉る台詞が、ちょっと効いている。

 素人の遊びだったらいざ知らず、ニューヨークでの個展、新聞に大きく掲載されるに及び、取材は殺到する。
日常の平安があらされ始め、ペッカーの身近な人たちは彼の写真撮影を必ずしも歓迎しなくなる。
友達でもあり写真のモデルでもあったマット(ブレンダ・セクストンV)は、有名になったおかげで万引きができなくなる。
恋人だったシェリー(クリスティナ・リッチ)は、写真が芸術であることが理解できず、商売のコインランドリー管理が忙しい。
家族は家族で、その影響にてんやわんやである。
一時は破滅しかけた人間関係も、ニューヨークの連中がボルティモアへやってくることで、いつの間にか回復し、映画はハッピーエンドに終わる。

 設定や展開が単純すぎて、現代美術批判なのだか、急に出世したことによる混乱なのか判然としない。
また、話はおおよそ予測がつき、意外性がなく、フィクションを楽しむ楽しさがない。
そのなかでも、いくつか面白かった部分を拾うと、ペッカーのおばあさんと妹が面白かった。

1998年のアメリカ映画。


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