タクミシネマ        Go! Go! L.A.

Go! Go! L.A.   ミカ・カウリスマキー監督

 スコットランドの葬儀屋に勤める若者リチャード(デヴィッド・テナント)が、たまたまロス・アンジェルスから遊びに来ていた女性バーバラ(ヴァネッサ・ショウ)に一目惚れ。
バーバラは俳優希望だが、今はウエイトレス。
リチャードは生活に不満があったわけでもなく、ガールフレンドもいたのに、ただ彼女を追いかけてLAへと飛び立つ。
ただ恋いこがれての旅立ちとは、とても良い主題である。
こんなことは先進国じゃなきゃできないことだ。

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 手がかりは、彼女が残したマッチだけ。
それを頼りに彼女に巡り会う。
交際を申し込み、一時は結婚までする。
しかし、リチャードはいかにも田舎者、軽いノリのLAっ子と言うわけではない。
三流監督のパターソンなる男にバーバラはとられて、結局二人の仲は破談へ。
モス(ヴィンセント・ギャロ)という友だちはできたが、血迷ったリチャードはバーバラを追いかけて、パーティに潜り込み、説得工作。
それに失敗し、誘拐と放火未遂で、逮捕されてしまう。

 逮捕された外国人に興味を持った映画のプロデューサーが、リチャードに眼をかけてくれ、
彼の脚本を買ってくれる。
ただし、バーバラは諦めてイギリスへ帰ると言う条件である。
イギリスでもとの葬儀屋をやっていると、パターソンに捨てられたバーバラが彼の脚本をもって現れ、二人の仲は戻るという話である。
話自体はたわいがないが、アメリカとイギリスの間だというのが、この映画のカギである。
言葉を共通にする者たち、文化を共通にする者たちの話である。
これが日本人男性とアメリカ人女性としたら、こうした展開にはならないだろう。

 軽い映画だが、なかなかにシニカルな眼ももっており、スコットランドとlaの違いが浮き彫りにされている。
ある意味では一種の文明批評なのだろうか。
フィンランドのミカ・カウリスキー監督が、ハリウッドに捧げた映画かも知れない。
たくさんの有名俳優がちょい役で出ており、それも楽しめるものになっている。
ちょい役と言うには大きな役どころだが、ジョニー・ディップが妙にとぼけた味で出演しており、いかにも彼らしい。
辛気くささはまったくなく、全体にはコメディといっても良い。

 ヒロインを演じたヴァネッサ・ショウは、きわめてグラマラスな肉体美で、最近の女優さんとしてはこの豊満さは珍しい。
彼女くらい肉付きの良い女性が裸になると、確かに迫力がある。
とても綺麗な体である。
しかし、色っぽさという点では、素直で健康な肉体はいまいちなのだ。
どこか影あったり、見せるようで見せなかったりと、観客の想像力をかきたてないとセクシーではない。
裸では格好良かった彼女だが、最後に普通の服装で登場すると、むしろ太めに見えてしまう。

 ところで、この映画を見ていると、フィンランドというかヨーロッパと言ったほうが良いのか、女性観つまりそれは人間観なのだが、女性観がすこぶる古いことに気づかされる。
リチャードのバーバラへの小児的な思いは、笑って見過ごすとして、問題はバーバラの身の処し方である。
パターソンはバーバラの演技の才能ではなく、体が目当てだとリチャードが言う。
それでも、バーバラはリチャードではなくパターソンを選ぶ。
ここまでは良い。
しかし最後に、バーバラがリチャードの前に現れる時の台詞は、パターソンの目的は貴方の言うとおりだったという。

 この映画は最後に二人の仲が復活するのだが、それにしても監督は女性の主体性を認めていない。
監督は女性を男性の願望のなかで描いている。
チェイシング・エイミー」のヒロイン・アリッサは、自分の男性体験に誇りを持っていた。
なぜなら、すべての男は彼女が自分で選んだし、多くの男性体験が今の自分を作ったと自負しているからだ。
バーバラが恥ずかしそうに、男性を見る眼がなかったという様子を見せるのとは大きな違いである。
どちらの女性が力強いかと言えば、アリッサであることは言うまでもない。
自分の考えで行動しないバーバラのような女性像は、もはや古いとしか言えないだろう。

 主役を演じたデヴィッド・テナントが上手かった。
ギャロの相手役はジュリー役ででたジュリー・デルピー。
映画の中で出演したバンドが面白かった。原題は「Los angeles without a map」である。

1998年のイギリス・フランス・フィンランドの合作映画。   


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