タクミシネマ        コンフェッション

コンフェッション      ローディ・ヘリントン監督

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コンフェッション [DVD]
 弁護士のローソン(キューバ・グッティングJr)が、明らかに殺人をおかした男性の弁護をしている。
彼は高額の報酬で引き受けはしたが、被告はまったく罪の意識がない。
彼はこんな男を無罪にしていいのか、と自分の正義感にさいなまれる。
とうとう担当の弁護を降りてしまう。
しかし、弁護士は弁護人の利益のためにいるのであり、弁護の放棄は弁護士の倫理に反する行動だった。
そのため、弁護士資格を剥奪されてしまう。

 弁護士を辞めてキーウェストでくすぶっていると、身寄りのない老人が接近してくる。
話が通いあって友だちになり、一冊の原稿を手渡される。
それは高額の報酬で弁護を引き受け、真犯人を無罪にしている弁護士を、次々に殺していくサスペンス小説だった。
しかも、「カラス殺人」と名付けられたその小説は、きわめて面白かった。
ローソンはその感想を伝えるために老人のところへ行くが、老人は前の晩に死んでいた。
彼は残された原稿を自分の作品だと偽って、出版社に売り込む。
その小説は、大ヒット。
彼は一躍にして有名人になるが、その小説どうりの殺人事件がおき、彼は犯人と疑われ逮捕される。
しかし、彼は逃亡し独自に犯人を捜す。

 最初からローソンが犯人ではないことは分かっているから、映画の興味はどうやって彼の無罪が立証されるかである。
老人の死を伝える警官の様子が不自然だったり、ローソンと犯人の対決場面に突然にデュボーズ刑事(トム・ベレンジャー)が登場したりと、この手の映画特有のやや無理な展開もたくさんある。
そこそこに力の入った映画だが、残念ながらB級映画である。
やはり犯人は最後まで分からず、意外な人物が犯人だったという展開が、サスペンス映画の王道だろう。
この映画のように、まったく別の人間が犯人として登場するのでは、謎解きの醍醐味が薄れる。
これではどんな設定でもあり得てしまい、サスペンスとしては緊張感に欠けるものとなってしまう。

 訴訟社会アメリカでは、弁護士が高額の報酬で事実をねじ曲げても無罪を勝ち取ってしまう。
事実が優先されるのではなく、弁護士のパフォーマンスが有罪か無罪を決めるようになってしまった。
有能な弁護士は、高額の報酬でぬくぬくとしている。
お金がすべての社会、法を守るべき弁護士が、法を守ることによって事実を曲げている。
事実を大切にしない弁護士への、警鐘をならすための報復殺人が、この映画の主題であることはよく判る。
しかし、ローソン自身がすでにベストセラー作家であり、大金持ちになったので、高額の報酬を払って弁護士を雇い、自らの無罪を勝ち取る。
この結末は、主題と矛盾するのではないか。

 無罪になったローソンは、「今度ばかりは、事実が守られた」というが、これでは事実は藪のなかではないか。
主人公が救われるハッピーエンドのほうが後味は良いが、最初が刑務所に収監され、事件を回想することから映画が始まるのだから、この映画の場合は獄中のままのほうがいいように思う。
大勢の人を登場させそれなりに良くできた展開だが、サスペンス映画としてもいまいち面白くなかった。
ところで、原題は「A murder of crows」だが、邦題はコンフェッションである。
どこにもコンフェスするシーンはなく、なぜこんな邦題がついたのかよく判らない。

1998年のアメリカ映画。


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