タクミシネマ        ベルベット・ゴールドマイン

ベルベット ゴールドマイン    トッド・ヘインズ監督  

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ベルベット・ゴールドマイン [DVD]
 オスカー・ワイルドから始まる芸人の歴史を、デヴッド・ボーイとイギー・ホップだと思うが、イギリスに起きたグラム・ロックに絡めて、話題を作っている。
音楽の方はいまいちのパワーだったが、舞台衣装や当時のイギリスの風俗は、良く再現されていた。
映画全体は、1984年に設定されるが、それから10年遡る形で話は始まる。

 デヴィット・ボーイと思われるブライアン・スレイド(ジョナサン・リース・マイヤーズ)は単なる音楽狂いだったが、マネージャーが替わってその売り出し方を変えるや、たちまち大スターになる。
しかし、いまだイギリスのスターにしか過ぎない。
売れない時代に聞いたイギー・ホップらしきカート・ワイルド(イアン・マクレガー)を思い出して、彼と組んだらと考える。
アメリカでは既に落ちぶれて、麻薬付けだったカートを拾ってイギリスでバンドを組む。
この二人組が大当たり。時代の寵児になる。

 このロッカーは、何でもありの時代の若者だから、薬からゲイまでやる。
しかし、1970年当時のイギリスはゲイには厳しかった。
ブライアンはお化粧をし、男とも付き合いながら、女性と結婚する。
ますます社会から離れるが、スター性は高くなるばかりである。
音楽で世界が変えられると思った彼等は、スターとは虚像の世界であることに気づかず、自分が変わってしまった。
社会は何も変わらない。こうしたジレンマに悩んでいるときに、相棒のカートのノリが外れてきた。

 ブライアンは最後の公演として、自分をステージの上で殺させると言うヤラセにより、自分の音楽生命に終止符を打つ。
それ以降、一切顔を見せなくなる。
その10年後、アメリカの新聞社にいる若者アーサーが、ブライアンの消息を調べ始める。
すると最後には、違う名前でデビューした音楽家が、ブライアンの変身した姿だと知る。
映画はそれとだぶって、アーサーの生い立ちを見せる。
彼もまた、自意識の確立に悩み、性意識が揺れた世代だった。

 時代の価値が崩壊し、混沌としている中で現れたスターの消滅と、その再生を追う映画である。
イギリスの映画らしく、地味な画面の中に派手な色彩が踊り、マイナーのメジャー指向と言った感じがする。
おそらくアメリカの映画だったら、もっと大がかりなステージを見せるだろう。
スケールの小ささがちょっと寂しかったが、時代を先んじることがどんなことなのか、そのジレンマに生きることがいかに大変か、そうした息吹は伝わってくる。

 話の展開が幾重にも入り組んでいて判りづらく、全体で何を言いたかったのかは、いまいちはっきりしなかった。
主題は、時代との苦悩なのか、サスペンスだったのか、謎解きだったのかよく判らなかった。
とりわけ、最後に再生してきた音楽家が、ブライアンであることを認めながら、アーサーの取材を没にしてしまう。
それをアーサーに圧力と言わせて説明しているが、蒸発したのは判るとしても、再生はそれだけでは判らなかった。

 こうした映画は、大音響の中で見るべきだろうと思う。
もっと大きな画面で、汗が飛んできそうな画面で、ノリノリに聞かせながら、はて何だったんだろうと言う仕立てが良いと思う。
ちょっと真面目に作りすぎている。

1998年イギリス映画。

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