タクミシネマ             U ターン

U ターン    オリバー・ストーン監督

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Uターン [DVD]

 アメリカの田舎道を怪しげな男ボビー(ショーン・ペン)が、64年型のムスタングのコンバーティブルを運転している。
この車はすでにクラッシクカーである。
古い車にありがちなことに、ラジエター・ホースが破裂してしまう。
仕方なしに脇道にそれて、近くの田舎町に修理屋を求めていく。
奇妙な修理屋だが、とにかく修理を引き受けてくれる。

 修理の間、町を散策していると、かっこいいインディアンの女性グレース(ビリ−・ボブ・ソーントン)に眼が止まり、強引に近づいて親しくなる。
彼女はボビーを自宅まで連れていき、幻惑的な仕草で彼を挑発する。
ボビーはたちまちそれに乗ったが、折悪しく年の離れた彼女の夫ジェイクがそこへ帰ってくる。

 ジェイクに殴られて追い出された彼は、歩いて修理屋まで行こうとすると、ジェイクが車で追いついてきて、送っていくという。
車の中で彼は、若い妻が他の男に色目を使い、それに自分は耐えられないから、妻を殺してくれと言う。
ボビーは冗談と聞き流して、町で車を降りる。
しかし、これは伏線だなと判らせてしまうのが、ちょっと安易な展開である。

 たまたま立ち寄ったコンビニに強盗が入って、巨額のお金が入った彼のバックを、奪っていく。
コンビニの女主人がショットガンで強盗を撃ち殺すと、バックにも弾が当たり、なかのお金が散乱してしまう。
もちろん出所不明のお金だから、警察には届けることが出来ず、ボビーはそのまま逃亡せざるを得ない。
ここで彼は無一文になってしまう。
車の修理代が150ドルだというが、彼にはもはやその金がない。
仕方なしに知り合いに送金を頼むが、母親からさえも断られる。
バックの金は、やくざに返す金だったのである。
借金を返済できなかった彼は、すでに指を二本切られている。
ヤクザは来るし絶体絶命。

 ジェイクの言葉を思い出して、殺しを引き受けるが、結局グレースを殺せない。
反対に、身の上話をうち明けられて、彼女に同情してしまう。
そしてジェイクを殺して、彼のお金を奪って二人で逃げよう、と彼女に持ちかけられる。
それにのった彼は、夜になってジェイクの家に忍び込む。

 ジェイクに見つかるが、何とか二人でジェイクを殺す。
ベットの下からお金を奪って逃げるが、欲でつながった二人だから、互いに心から信用できない。
それでも何とか逃亡を始めると、警官が追いかけてくる。
万事休すと彼は観念する。
しかし、警官は彼を追ってきたのではない。
何とその警官はグレースとできていて、グレースに行かないでくれと頼む。
グレースは町の他の男とも出来ているらしい。

 グレースと警官は口論となり、警官はジェイクは実の父親で、父子相姦の夫婦だったと暴露する。
そこで、グレースは警官を殺す。
ボビーはもはやグレースを信じることが出来ない。
死体の始末から二人はもめ始め、グレースはボビーを愛したかったが、裏切られたと感じた彼女は、ボビーを崖から突き落とす。
しかし、車の鍵をボビーが持っていたことから、落ちたボビーのところへ鍵を拾いに行かざるを得ない。
彼女はそこでボビーに撃ち殺される。
瀕死のボビーは車にはい上がって、やっと逃げることが出来ると思ったとたん、ラジエター・ホースがまた破裂する。
砂漠の真ん中で逃亡の足がなくなり、同時にボビーは絶命して映画は終わる。

 都市生活者のボビーと、田舎のねっとりとした生活が対照的で、オリバー・ストーン監督は因習的で独特の価値観を持ったアリゾナの田舎町を、不思議なタッチで描いていく。
無一文になったボビーが、まるで砂漠の蟻地獄のような町にからめ取られ、なかなか這い出ることが出来ない様子を、欲と愛情を綯い交ぜにして見せる。

 グレースは、インディアンである母親を、ジェイクが死に追いやったと信じている。
弱者であるインディアンの女性と、白人男性の社会的構造が見える。
彼女はジェイクと近親相姦に追い込まれても、一人では田舎から出ることは出来ない。
たまたま来たよそ者が自分をこの環境から解放してくれると思って、ボビーにのめり込んで行くが、ボビーは驚くことを次々に聞かされて、彼女を信じ切れなくなってしまう。

 このあたりはなかなか良くできた心理劇で、お金と性欲とが信頼という形になって、現実化することの難しさを教えてくれる。
愛情を注がれずに、不信の環境にいた者は、差し出された愛情を信じることが出来ない。
愛情もまた訓練の成果だと、オリバー・ストーン監督は言う。

 状況設定がやや特異な感じがするが、それでも監督のいわんとするところは良く伝わってくる。
B級映画ながら、渋い感じの映画である。 1997年アメリカ映画


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