タクミシネマ　　　　　　　　　　　　　　乱気流

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乱気流 タービュランス [DVD]

　凶暴な顔の犯人がトイレに立って、すきを見て刑事を刺殺。
その拳銃を奪って、もう一人の護送の刑事も殺す。
たちまち銃撃戦になるが、もう一人の殺人犯ヴィシー(レイ・リオッタ)が犯人と刑事たちを射殺する。
それで事件は解決かと思いきや、パイロットが二人とも殺されてしまう。
誰も操縦していない飛行機は、オートパイロットで飛行しているが、着陸できなくなってしまった。

　死刑が確定しているヴィシーは、ジャンボジェットをロスアンジェルスの街へ激突させて、自分も死ぬつもりである。
数人の乗客は乗務員室に隔離され、男性スチュワーデスも殺されてしまう。
残るのは女性スチュワーデスのテリー(ローレン・ホリー)一人である。
ロスアンジェルスの飛行場に着陸するまで、ヴィシーとテリーのやりとりがはらはらさせる。
最後はテリーが、他のジャンボ機の機長の指示にしたがって、無事着陸させ目出度し目出度しとなる。

　映画としては単なる娯楽映画で、取り立てて上手くできているわけでもなく、むしろ平凡である。
予測どおりに、犯人に刑事が簡単に刺殺されるなど、単純すぎる展開である。
ヒロインの友達は死んでも、ヒロインが死ぬことはないし、結末は判っているので驚きはない。

　少し考えさせられたのは、拳銃の扱いと体力の関係である。
二人の凶悪犯は男性としても体が大きく、体力にあふれている。
スチュワーデスは体力勝負の仕事とはいえ、女性であるテリーは凶悪犯である男性と比べたら遥かに非力である。
その二人が飛行機の中で格闘をしたら、どちらが勝つか自明である。
ところが拳銃があるとそうではない。
テリーはヴィシーを凶悪犯とは思えず、引き金を引くことを躊躇していたが、最後には決断がついてヴィシーを射殺する。

　人に向かって引き金を引くことは、それが確実に殺人になることを知っているから、誰でも躊躇する。
男性だから引き金が引け、女性だから引けないことはない。
男性は抗争の矢面に立ち、自分だけで判断することを訓練されてきた。
男性は刃向かってくる者と戦うべく教えられてきた。

　女性はいままで自分が誰かを守ったりする環境にはいなかった。
だから女性は、刃向かってくる者と戦う決断することになれてない。
そのため拳銃の引き金を引くには、どうしても腰が引けて躊躇してしまう。
もし男女差があるとすれば、女性は戦う教育をなされてこなかったので、引き金を引く精神的な正当性を獲得しにくく、男性は教育によりそれを獲得しやすいに過ぎない。

　今日では女性警察官や軍人もいるように、女性も男性と同様に戦う環境に置かれる。
いまや社会が戦うことを女性にも訓練する。
そうした訓練を受けてくれば、女性でも引き金を引くことはできる。
肉体的な格闘になれば、女性は今でも男性にはかなわない。
しかし、戦う人間のあいだに武器が置かれると、体力が平均化されて、技術や気力が大きなウエイトを持ってくる。

　最近のアメリカの映画は、女性に拳銃を撃たせることが多くなった。
拳銃を使えば、非力な人間でも人が殺せる。
拳銃は体力差を平均化し、精神的な力に重要性を意味づける。
自己防衛権を、フェミニズムの女性たちはどう考えているだろう。原題「Turbulence」。1997年アメリカ映画。