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タンゴ レッスン    サリー・ポッター監督   

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タンゴ・レッスン [DVD]
 イギリス人女性の映画監督サリーが、タンゴに魅せられて、タンゴダンサーになり、不実な男性タンゴダンサー・パブロとの関係に悩みながらも、タンゴを愛する話である。
しかも、彼女もパブロもユダヤ人であり、ユダヤ人であるアイデンティティが語られる。
しかし、ユダヤ人であることが、タンゴと具体的にどういった関係があるのかは語られない。

 12のレッスンから構成されるこの映画は、まず、サリーが脚本を練っているところから始まる。
彼女は、三人のファッション・モデルがパリで撮影中、カメラマンの嫉妬から次々に殺される脚本を執筆中である。
ほんの気休めに入った劇場で、一組のタンゴ・ダンサーが踊っていた。

 彼女はそのダンスが大変気に入り、男性ダンサー・パブロに面会を求める。
そして、自分もタンゴを習いたいという。
なかば押し掛けるようにして、パブロの元にタンゴを教えてもらいに行く。

 ブエノスアイレスとパリを行ったり来たりしながら、彼女がタンゴに目覚めていく話が続く。
その途中から、サリーはパブロに恋心を感じていく。
サリーが脚本をイメージする場面だけがカラーで、他はすべてモノクロという映画であるが、タンゴを踊る場面をのぞいてちっとも面白くない。
タンゴの素晴らしさを見せる映画なのか、サリーの恋を描くのか判らない。

 タンゴに限らず、昔に確立された踊りというのは、本当に土臭いものだと思う。
肉体を使って表現してきた舞踊は、肉体を使うが故に肉体という、自然の規定性から自由になることはできない。
むしろ肉体の極限まで使うことによって、表現の幅を広げようとしてきたので、舞踊は肉体そのものと言っても良い。


 肉体の構造は、どんな社会でも変わることはなく、情報社会になっても変わらない。
そのため、長い時代に鍛えられた様式は、完全に肉体に染みついている。

 情念とか呪術が有効だった時代から、人間は踊ってきたと思えば、舞踊がいかに農耕社会的であるかは、簡単に納得できる。
しかも、現在知られる舞踊は工業社会に入る時、工業社会的な装飾を施された。
それが何かモダンな感じを抱かせ、今でもしばしば見られる。
フラメンコしかり、タンゴしかりである。
しかし、こうした踊りは、初期工業社会に生きたものであり、今では古さを否めない。

 この映画は、ノスタルジックな踊りとなったタンゴをモノクロの画面が、良く雰囲気を伝えている。
男女の足が複雑に交差する、官能的なタンゴの踊りが次々に繰り広げられる様は、遠い昔の場面を見ているようで懐かしかった。
サリーなる女性の実話だと言うが、映画としては見せる工夫がなく、感動が伝わらない。

 1997年イギリス+フランスの映画


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