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1950年代のアメリカ、物が豊富になり始めた社会のなかで、若者が精神の飢えからどうしても安定を指向できなかった。その若者はニール・キャサディー(トーマス・ジェーン)といって、 女性にはもてるし友達にも好かれるが、気が弱く他人の心を傷つけることに怯えている。男の男たる象徴であった、黙って仕事に励む姿にどうしても同化できない。ビート世代というのだろうか。 映画はたった一週間くらいの、短い彼の生活の一端を描くだけである。スティーヴン・ケイ監督は、短いその断面から、彼の精神の動きを伝えようとする。状況の説明が不足しているので、何が主題なのかひどく分かりにくい。アメリカではニール・キャサディーは、非常に有名なのだろうと思う。それでなくてなこの映画は成り立たない。 最初のガールフレンドのチェリー・メリー(グレッチェン・モル)は理解できる。しかし、映画では冒頭に登場するジョーン(クレア・フォーラニ)が分からない。彼と恋仲なのは分かるが、なぜ自殺未遂をするのか最後まで分からない。一度見舞いに行っただけで、瀕死の彼女を病院に残して、彼女の前から消えてしまうのも分からない。それが彼の弱さだというのだが、やはり説明不足である。また、回復したジョーンが友人を使って、ニールを探し出すのも分かりにくい。 ニールのタイプは、アメリカでは好感されるのだろう。ニールを演じたトーマス・ジェーンは、ジェームス・ディーンによく似た顔かたちで、アメリカの青春を演じていた。彼は今後の展開で役者として伸びるかも知れない。悪友ハリーを演じたキアヌ・リーブスは下手な役者である。主題の現代的な展開が不足である。また、画面も逆光を使ったりと考えて撮影されているが、それが思いつきに留まっており、スタイルをもつにまで至っていない。 ニール・キャサディーは、放浪の作家だったらしく、48才でニューメキシコで死んだとある。彼に捧げる映画だったのだろう。 | |||
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