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レイン メーカー     フランシス・コッポラ監督  

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レインメーカー [DVD]

 ジョン・グリシャム原作、マイケル・ダグラス製作、フランシス・コッポラ監督で、マット・デイモンが主演とくれば期待できると思うだろう。
しかし、その期待はかなえられなかった。

 若き弁護士ルーディ(マット・デイモン)が、貧しい人たちのために弁護を引き受けて、訴訟に勝つ話だが、如何せん話が単純すぎる。
若き司法学生ルーディは、まったく実績がないうちから、顧客だけは三人もいた。
もちろん、お金のない人たちで、ふつうの弁護士は相手にしない階層の人たちである。
一人目は白血病になったのに保険金を払って貰えない男性。
二人目は夫の暴力に虐待される若い妻。
三人目は遺産を子供に残したくない老婦人。

 ルーディが卒業して勤めた事務所は、FBIの手入れにあいそうなので、相棒のデック(デニー・デビート)とたちまち独立する。
三人の顧客を助けるべく、彼はデックと二人で練達の弁護士を相手に必死で頑張る。
とりわけ一人目の顧客の事件が、原告は白血病で裁判の最中に死亡したにもかかわらず、空前の5千万ドルという賠償金を取る完全勝訴となる。
公判の途中で何度も示談の話が出たのを原告側は拒否して、判決まで持ち込み完全勝訴となったが、保険会社は倒産して一銭もとれない結果となる。

 二人目は、家庭内暴力に怯える若い女性ケリー(クレア・デーンズ)だが、離婚訴訟に踏み切ったとたん、夫とルーディが格闘となり、ルーディは夫を殺してしまう。
そこで彼女は、ルーディの身代わりになって逮捕される。
しかし、正当防衛が認められて、不起訴となる。
三人目の老婦人ミス・バーディ(テレサ・ライト)は、ルーディの働きに感激して、遺産の一部を分けると言い出す。

 いずれも現在の訴訟万能の社会で、高い報酬をとる弁護士が、お金持ちのためにのみ働いている現状を、批判したかったのはよく判る。
しかし、それにしてはルーディの人物設定が幼稚すぎる。
まだ「評決の時」のほうが納得できる。
司法試験も通ってない学生が、正義感だけで訴訟に勝てることがおかしいし、若い情熱だけが正義を支えるわけでもない。
老練な弁護士たちが、お金に目が眩んでいるとしか言えないのはあるとしても、真面目にやっている弁護士だっているはずである。
あんな若造が簡単に勝てるとしたら、弁護とはよほど楽な仕事である。

 現状を批判するためには、現状の反対概念を持ってくるのが定石で、若いことは現状批判の鍵にはならない。
若さが正義感と同義だったのは、歳のいった男性が社会を支配するという農耕社会の秩序に反乱してできたのが、工業社会だったからに他ならない。
工業社会の初期は、若いことは正しいことだった。
工業社会が終わろうとしている今、若者は社会体制の変革者たりえない。
正義感=若さという構造は、単純としか言いようがなく、コッポラ老いたりと言った感じである。

 二人目の若い女性ケリーの登場のさせ方に、自然さがない。
彼女はただ被害者と言うだけだから、庇護されるものとして登場し、ヒロインとして迫力がない。
しかもルーディが心を動かす対象となっているが、今後の彼の人生を考えると、彼が心を動かす対象にはならないだろう。
なぜなら、彼は保護する対象を伴侶とするのではなく、助け合える異性を伴侶としなければ、よりよい弁護活動など出来はしない。
最後に、教職に就きたいという台詞で終わるが、振り上げた正義感はどこへ行ったのかと思える。
映画としての説得力が弱い。

 ルーディのボルボは良いとしても、キプラー判事がジャガーに乗っているはスノッブすぎないか。
1997年アメリカ映画。


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