タクミシネマ              ナッシング・トゥ・ルーズ

ナッシング トゥー ルーズ
 スティーブ・オーディカーク監督 

 奥さんの妹とその恋人とのベットシーンを、奥さんの浮気と勘違いした男ニック(ティム・ロビンス)が、やけになって暴走するコメディーである。 予想もしなかった出来事に、茫然として車を運転していると、金を出せと黒人のt(マーティン・ローレンス)が乗り込んでくる。しかし、愛する奥さんを失ったと思いこんでいるニックは、今や何も怖いものはない。反対に強盗を連れて、アリゾナの砂漠へと、あてもなくドライブに出る。至高のものを失った以上、もはや失うものは何もないという主題である。

 強盗に来たtのとんまぶり、ニックとtとの掛け合いや、ひょんな事から出くわした指名手配中の強盗たちとの抗争、tの家族たちとの触れ合い、また、浮気の相手と勘違いした上司への面当てに上司の金を盗みに入る話など、様々のエピソードを交えながら、話は進む。特に、自分の職場である上司の部屋に忍び込むシーンでの、警備員の一人ダンスは出色である。また、黒人tの旧来の大家族が、人間関係が濃厚で、かえって今では新鮮に映るのも不思議である。

 映画の中にふんだんに使われている音楽が、最近の流行曲でありながら、なんだか昔聞いたように感じられて、妙な感じがした。スキャットマン・ジョンの音楽に合わせて、ティム・ロビンズが体を揺するシーンはよかった。達者な役者たちによってそれなりには見えたが、主題の掘り下げが浅く、いまいちの充実感に欠けていた。このテーマでも、充分に楽しい物語にすることが出来るはずだから、何とかもう少し工夫が欲しかった。

 愛情が失われた以上、もはや何も失うものはないという主張は、十分に理解できる。しかも、奥さんの浮気が自分の誤解だったと判ってからは、嫌がるtを説得して盗んだお金を返す。その時の理由が、「自分の生活がかかっている」というが、それもよく判った。また後日談として、tを自分の会社の電気技師として、会社に推薦するのも、見えていたけれど微笑ましい結末だった。
1997年アメリカ映画。


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