タクミシネマ            迷宮のレンブラント

迷宮のレンブラント   ジョン・バダム監督

 贋作家のハリー(ジェイソン・パトリック)が、レンブラントを依頼されたことから事件が始まる。
50万ドルという高額報酬につられてハリーは、レンブラントの贋作に着手。
パリからアムステルダムと歩き、調査の上、肖像画を制作。
依頼したロンドンの有名画廊に引き渡そうとする。
画廊側は、画廊主、支配人と副支配人の三人だった。

 最初は、韓国人の収集家に絵を手渡すと言うことだったが、あまりにも完璧な出来映えに、画廊の支配人はオークションにかけると言い出す。
そのほうが大金になるのだ。
しかし、それを聞いたハリーは約束が違うと、引渡を拒否。
拳銃を持ちだした支配人から、ハリーは拳銃を奪い威嚇射撃を一発。
絵を持って逃走する。
支配人は、そのあとで副支配人のヒガシという日本人を射殺、強盗殺人に仕立てる。
これで絵が手に入れば、ハリーへの支払いもしなくてすむ。

 レンブラントの原画調査の時に、パリで知り合ったマリーケ(イレーヌ・ジャコブ)とハリーは、意気投合して一夜を過ごした。
彼女は学生だというふれこみだったが、本当はレンブラント専攻の美術史の教授だった。
その彼女は、ハリーの描いたレンブラントを、贋作と見破ったたった一人の鑑定人だった。
彼女を人質にして、逃亡。
しかし、逮捕され裁判にかけられる。
裁判の最後に出廷した画廊主が事実をばらして、支配人が逮捕され一件落着。
ハリーとマリーケが結ばれて映画は終わる。

 絵画ビジネスの暗部を描き、極貧のうちに死んでいった画家たちの怨念。
現世の価値を決めることの危うさ。
表現者の孤独。オークションにかけるものの落札者は香港人、最初の依頼者が韓国人。
このあたりもアジア人たちの金持ちぶりを皮肉りながら、価値を決めるのは白人だという自負。
しかも最後には、発見されたのがスペインという伏線が意味を復活。
スペインで発見されたので、第一発見者のスペイン人が所有権を持つというおちで、画廊主は一銭も手にできなかったと言う顛末である。

 贋作の多いレンブラントという作家を使って、なかなか良くできた謎解きのB級映画だった。
贋作の製作の過程は興味深いものだった。
決して派手ではないが、丁寧に作られている。
しかし、ハリーとマリーケの出逢い、美術館での再会、マリーケの鑑定人など偶然が多く、映画としては優れたたミステリーとは言い難い。
それと、木枠から外したキャンバスは絵を外側にして巻くのが普通だが、この映画では反対に巻いていたのは何故だろうか?
そんなことをしたら、絵の具が剥がれてしまうのに。
原題は「Incognito」  

1997年のアメリカ映画。 


TAKUMI シネマ>のおすすめ映画
2009年−私の中のあなたフロスト/ニクソン
2008年−ダーク ナイトバンテージ・ポイント
2007年−告発のときそれでもボクはやってない
2006年−家族の誕生V フォー・ヴァンデッタ
2005年−シリアナ
2004年−アイ、 ロボットヴェラ・ドレイクミリオンダラー ベイビィ
2003年−オールド・ボーイ16歳の合衆国
2002年−エデンより彼方にシカゴしあわせな孤独ホワイト オランダーフォーン・ブース
      マイノリティ リポート
2001年−ゴースト ワールド少林サッカー
2000年−アメリカン サイコ鬼が来た!ガールファイトクイルズ
1999年−アメリカン ビューティ暗い日曜日ツインフォールズアイダホファイト クラブ
      マトリックスマルコヴィッチの穴
1998年−イフ オンリーイースト・ウエストザ トゥルーマン ショーハピネス
1997年−オープン ユア アイズグッド ウィル ハンティングクワトロ ディアス
      チェイシング エイミーフェイクヘンリー・フールラリー フリント
1996年−この森で、天使はバスを降りたジャックバードケージもののけ姫
1995年以前−ゲット ショーティシャインセヴントントンの夏休みミュート ウィットネス
      リーヴィング ラスヴェガス

 「タクミ シネマ」のトップに戻る