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愛のトリートメント    ジョナサン・ジェムス監督

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愛のトリートメント [DVD]
 ロス・アンジェルスを想像させる街ノーブルスヴィルは、フランチェスカ(ジュリー・デルビー)、ミミ(ジョアンナ・ケイツ)、ドリー(パメラ・ギドリー)と三人の娼婦を置く、売春館テインテッド・レディ・ラウンジでの話。

 トニー(ダニエル・ボールドウィン)が経営する表は酒場だが、裏では紹介者だけを相手にする、いわば会員制の売春宿だった。
三人の娼婦共に美人揃いで、その道のプロで、客には評判がいい。
会員制だから、客の身元はしっかりしている。
しかも地元の政治家・警官・軍人を得意客にしているので、商売は繁盛であった。

 映画の3分の2は、彼女たちと様々な客とのやりとりである。
監督のサービス精神いっぱいに、男たちが実に愚かにしかも可愛く描かれる。
客は変な種類の男たちには違いないのだが、いずれも心に傷ついた男たちである。
彼等が娼婦を相手に、お金を払って非常識なことを繰り広げる。
しかし、その非常識さと言っても、心に傷ついた彼等のこと、たわいのないことばかりである。

 ただちょっと度が過ぎると、脱線するのはどこの世界でも同じ。
ドリーに本気で熱を上げた男は、彼女にプロポーズする。
しかし、ドリーはゲイで女性警官と同棲している。
彼女にはその気は全くない。
冷たくあしらわれたと感じた彼は、ストーカーとなり彼女を襲う。
危うく強姦されそうになったところで、同棲の相手である女性警官が帰宅し、取り押さえられて無事救失される。

 市長の誕生パーティの余興として、ケーキの中にミミを入れて、会場で開けようとするが、彼女は中で失神。
慌てて裏に引っ込めるが、死んでいると勘違いした市長は大喜び。
実は彼は死体愛好者だったのである。
これにはトニーもびっくり。
しかし、途中でミミは息を吹き返し、それに驚いた市長が心臓麻痺で死亡する。

 フランチェスカの夫が彼女を捜して、この街に来る。
彼女は夫の元から失踪してきたのだった。
彼女はガンとして帰らない。
彼は仕方なしに力づくで誘拐し、車に乗せる。
彼女は誘拐されたことに悪態の限りをつく。
しかし、実はそれが彼女の愛情表現で、二人は幸せのうちに元のさやに収まっていく。 

 観念が自立し、女性が自立し、もはや女性と男性はまったく同等である。
そこで、売春はもはや女性蔑視の仕事ではない。
ただ若いときだけ、高給が稼げる肉体労働である。
それは自明のことで、女性の地位が貶められているから、売春が女性差別の仕事になるのである。

 女性が自分の自由意志で売春を選び、いつでも辞めることができる職業選択の自由があれば、売春は単なる一職業である。
専業主婦なる存在があったから、経済力ない専業主婦の立場を守るために、売春婦は悪とされたに過ぎない。

 B級映画だが、なかなかに力が入っている。
特に売春宿のセットは凝ったものだったし、彼女たちの服装や政治家の誕生パーティなどよくできていた。
また、出演者たちもちょい役とは言え、そこそこの人たちが脇を固めており、しっかりした映画に仕上がっていた。
この映画を女性監督が撮ったなら、フェミニズムの主張そのままであり、男性監督なら壮大な観念の遊びである。
1997アメリカ映画。


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