タクミシネマ              イン&アウト

イン&アウト    フランク・オズ監督  

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イン&アウト [DVD]
 インディアナ州のある田舎町での話。
高校で国語(英語)を教える教師ハワード(ケビン・クライン)が、あと一週間後に結婚しようとしている。
3年という長い婚約期間、まじめな彼は婚約者エメリー(ジョーン・キューザック)にとうとう手を出さなかった。
それがあと一週間後に結婚するのである。


 そんな時、俳優になったかつての教え子キャメロン(マット・ディロン)が、アカデミー賞で主演男優賞を手にしようとしていた。
それは町の誰でも知っており、関係者全員がそのシーンを見ようと、テレビの前に集まっていた。
もちろん、ハワードも彼の婚約者と一緒にテレビの前にいた。

 オスカーを手にしたキャメロンは、テレビに向かって感謝の言葉を述べ、そのなかでとりわけハワードに感謝する。
とその時、彼はハワードがゲイだと公言してしまう。
それからが大変、マスコミの取材は殺到するは、婚約者・両親・職場・教え子・近所の人たちから、もみくちゃになる。

 ゲイを許容しない田舎の空気が、彼を追いつめていく。
校長が彼を呼んで、ゲイかどうか確かめるが、彼はストレートだと言い張る。
校長は結婚式をしなかったらクビだと宣告。
彼はストレートだと言い張って、結婚式に臨む。
そして結婚式の宣誓の場面で、自分はゲイだと告白する。
結婚式は、当然の大混乱で、中止。

 ハワードは卒業式の前日、高校の教師をクビになる。
卒業式の会場で、ハワードがクビになったことを会場の全員が知る。
そこへかつての教え子キャメロンが乗り込んできて、ハワード擁護の大演説。
それにつられて、教え子たちが自分もゲイだと次々に言い出す。

 風紀を乱すゲイを理由に解雇しようとしていた校長は孤立。
キャメロンがオスカーをハワードに渡して、ゲイでも普通の市民に変わりがないことを確認して映画は終わる。
自分がゲイであることにはちょっと距離をとるが、ゲイも差別しないと言う映画である。

 ゲイの映画は既にたくさん作られており、とりたて新しいものではないが、田舎町のゲイというのが面白い設定である。
ゲイはホモと違って、都会にしか生きる基盤を持たないが、田舎にも今やゲイがいてもおかしくない時代になりつつある。
田舎にもゲイがいて欲しい、という願望をこめた映画で、誰でもが平等になることの社会的な宣言である。

 田舎町が、都会とかテレビと言った先端的な部分から、新たな時代の息吹を吹き込まれ、ゆっくりとだが変わっていく様子が、上手く画面で展開されている。
親兄弟や教え子と言った廻りの人たちが、ゲイであってもハワードを愛し続けるという姿勢にはいつも感心させられる。
わが国では、親の意志に反した子供は勘当といったふうに、親が子供を切り捨てる。
子供それ自身の存在を丸のまま認めようとせず、子供の生き方を親が強制しようとする。
1997年アメリカ映画。


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