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アメリカ映画だと思うが、ヨーロッパ的な映像スタイルを持った近未来映画である。 ライトの建築、コルビジェの椅子、ペンの写真のイメージ、シトロエンの車といった過去のものを使いながら、近未来を描いている。 空飛ぶ乗り物も登場せず、奇想天外なものはないけれど、映像表現は新鮮である。 目に見える科学の成果が上がった時代を借りて、近未来を描くのは映画の主張と良く重なって、硬質な社会を描くことに成功していた。 また、ユナ・サーマンの雰囲気も、無機的な感じが良く出ていた。 子供が産まれると、直ちに遺伝子検査をされて、その子の一生が判ってしまう。 現実は甘くない。 この映画の世界では、顔が似ているとか性格とかは無視され、遺伝子が当人のIDである。 ところが、そこで殺人事件が起き、まったくの偶然から不適格者が紛れ込んでいることが、バレてしまう。 この映画の主題は、科学が進歩して、人間の一生が遺伝子で簡単に判明し、それによって強力な差別ができあがっていく。 遺伝子情報によって、何歳にどんな病気が発症し、何歳まで生きるかが判るから、科学の名の下に人間の選別が許容されやすい。 しかし、地球を捨てたかったヴィンセントだが、その出発が近ずいたとき、同僚のアイリーン(ユナ・サーマン)に恋をしてしまう。 物質的には満たされた世界で、エリートが支配し、それ以外の人間は底辺労働に従事させられている社会。 ヴィンセントに遺伝子情報を提供するジェロームにしても、体力的にはエリートでありながら、オリンピックで期待された金メダルをとれなかったばっかりに、人生を投げて自殺未遂。 お話としてこの映画は良くできていたし、とても楽しめたが、支配の構造という政治的な面から見ると、この映画のようにはならないだろう。 暴力による強制的な支配は、きわめて効率が悪く、生産力が上がればあがるほど、対応できなくなる。 肉体への直接的な働きかけはもう終わった。 小規模な形では、オウムや他の多くの宗教団体が実践している。 | |||||
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