タクミシネマ            フィフス・エレメント

フィフス エレメント    リュック・ベッソン監督

 エジプトの砂漠に、四つの石が隠された洞窟がある。
司祭が代々に渡って守り伝え、そこを管理している。
壁には文字のような絵のようなものが描かれ、1914年、それを白人の考古学者が解読している。
ところが地球の安全が怪しくなったので、その石を他の場所に移動するために、善なる宇宙人がやってくる。
300年後だと言って、石をもって宇宙人は去る。

フィフス・エレメント [DVD]
劇場パンフレットから

 舞台は300年後の23世紀、宇宙人の体の一部が手にはいる。
そこから体全体を再生してみると、若くてきれいな女性の宇宙人リールー(ミラ・ジョヴォヴィッチ)が誕生する。
彼女が逃げ出したことから、警察が追いかける。
偶然にコーベン・ダラス(ブルース・ウイルス)の運転するタクシーに、リールーが飛び込む。
警察の追撃から彼女を救い、司祭の子孫コーネリアス(イアン・ホルム)に届ける。
300年前を知る彼は、リールーが誰だか直ちに理解する。

 武器商人ゾーグ(ゲイリー・オールドマン)が悪の手先になって、四つの石を捜している。
それが悪の手に渡ったら、宇宙の生命はすべて破滅である。
その石は、フロストン・パラダイスの舞台で歌うディーヴァ(インヴァ・ムラ・チャコ)がもっているという。
コーベンとリールーがフロストン・パラダイスに向かい、その石を手に入れようとするが、悪い宇宙人が襲撃してフロストン・パラダイスは大混乱。コーベンの活躍によって、石が手に入り悪を退治できて、コーベンとリールーは結ばれる。
めでたしめでたし。

 四つの石が宇宙を構成する要素、風、火、水、土をあらわしている。
それらが第一から第四の要素である。
第五の要素は、なんだか知らされてない。
四つの石を四角形に置いて、その中心に第五の要素を置くと、正義の至高の力が発揮されると言う設定である。
悪い宇宙人が地球と衝突しようかという瞬間、四角形の中心にいたリールーの体から光線がでて、悪い宇宙人を一瞬のうちに消し去る。
リールー自身が第五の要素であり、彼女がコーベンの愛を感じたとき、つまり愛が第五の要素だったのである。

 この映画に主題を云々しても仕方ない。
話はまるで童話である。
ただすごいのは、特撮とSFXである。
いまやSFXは、まったく違和感がない。
通常の場面とまったく連続している。
それが見せるのである。タクシーにしても、平面を走るのではなく、空中という三次元を走っている。
何百階建てという高い建物の上から地上まで、タクシーが縦横に走る。
宇宙シーンにしても実に自然である。
リュック・ベッソン監督の未来映画であるが、特撮やSFXはよくできている。

 ところで、未来物は本当に難しい。
つまり、善なるものにしても悪なるものにしても、いまだ見ぬ形を作らなければならないから、想像力がついていかない。
23世紀の都市にしても、現在の都市からでてないし、タクシーなどの交通機関にしても現在のままである。
映像技術は進んでも、表現するイメージは飛躍できない。
仕方ないことなのだろうが、物足りないのは否めない。

 インヴァ・ムラ・チャコの歌は美しかったが、
美神ディーヴァが女性のオペラ歌手であること、
舞台が古い形式のオペラ劇場であること、
服装がゴルチェであること、フィフス・エレメントが女性であること、
リュック・ベッソン監督は、西洋文明史観からでていなくて観念が古い。
ヨーロッパ文明の中でしか発想していない。
おそらくフィフス・エレメントに愛を絡めたのは、アメリカ資本が入っているからだろう。
23世紀を扱いながら、こうした西洋中心主観から抜け出せない彼は、文化的なファシストである。

 リールーを演じたミラ・ジョヴォヴィッチには、不思議な魅力があったが、この配役はベッソン監督のマザコン的な性格の反映ではないか。
彼はいまだ真っ当な大人の女性を描いていない。

1997年のアメリカ映画


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