タクミシネマ             ファーザーズ・デイ

ファーザーズ デー      アイバン・ライトマン監督

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ファーザーズ・デイ [DVD]

 父親に叱られて、息子のスコットが家出をしてしまった。
父親は捜そうとしない。
困った母親はかつてのボーイフレンドのデイル(ロビン・ウイリアムス)とジャック(ビリー・クリスタル)に、各々あなた達の子供だと言って捜させる。

 自分の子供だと言われた二人は、それぞれ必死になって捜し始める。
ところが二人は、同じ子供を捜していることを知る。
どちらが父親か判らないが、とにかく可能性があるのだから、協力して捜し始める。
このあたりは日本と比べてどうだろうか。
昔のガール・フレンドからあなたの子供だといわれたら、我が国の男性はどんな対応をするだろうか。
これほど熱心に子供を捜すだろうか。
とくにジャックは家庭があるから、突然の子供出現を好感するだろうか。

 家出したスコットは、好きな女の子にいいところを見せようと、麻薬の売人から預かった五千ドルを、彼女のために使ってしまう。
スコットが逃げ、それを追う二人。
最後は、無事に保護され、両親に引き渡される。
二人とも、自分が父親である可能性に半信半疑だったが、父親とスコットはウリ二つ。
しかしスコットは、それぞれにあなたが父親だと、心暖まる嘘を言う。

 話題は現代的だから、もっと面白くできたと思うが、いまいち盛り上がりに欠け、平板のまま終わってしまった。
ほとんどデイルとジャックの掛け合い漫才のような展開で、二人とも達者な役者であることが判る。
しかし、家出してからのスコットの設定が平凡なので、子供探しの必然性がうすい。
それに、父親が探しにでると、車が故障し、仮設トイレごと転落し、汚物まみれになるのは、もっときれいな話があっただろう。
こうした話で、汚物まみれになるシモネタもどきは、いただけない。

 弁護士のジャックが捜すのをあきらめたとき、売れない脚本家のデイルが、自分には何もないから子供を捜さなければならない、という子供を捜す理由が良かった。
自然の支えがない、手応えがない時代になればなるほど、血縁と言った自然の繋がりが欲しくなるのは判る。
成功している人には、自分が選択した人生が間違いではなかったという意識がある。
だから、おのずと自分に自信があり、改めて自分の分身を求めなくてもいい。
同じ社会でありながら、成功しなかった者にとっては、何かが必要である。
それは子供でなくとも良いのだろうが、とにかく何かが必要なのだろう。

 核家族が崩壊し、かつての家族的な繋がりがうすくなったので、何か頼れる人間関係を求めている。
そこで血縁なのだろう。
自然は人間を支えないと判っても、自分の子供という血縁に収束していく意識からは、簡単には抜けられないだろう。
純粋な愛情が確立されるまでは、試行錯誤が続くに違いない。

 映画としては盛り上がりに欠けた。
達者な俳優たちと、ナターシャ・キンスキーといった役者を登場させながら、アイパン・ライトマン監督の演出は消化不良のようだった。
1997年アメリカ映画。


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