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アーサー・ミラーは、第二次世界大戦後アメリカを吹き荒れたマッカーシー旋風=赤狩りへの批判を込めて、魔女狩りになぞらえてこの原作を書いた。 しかし共産主義国なき今、その原作を映画化するのは、赤狩りを描いているのではなく、現在の社会状況に対する見方にもとづいているはずである。 良き村人であるジョン(ダニエル・デイ=ルイス)は、奥さんと二人の子供そしてウィノナ・ライダー扮する問題女中アビゲイルを抱える、勤勉で平凡な農夫だった。 アビゲイルはジョンのところを離れたが、同じ村内に住んでおり、未だにジョンが忘れられない。 ある晩、村の女の子供たちだけで森に集まって、占いのような呪い遊びに興じていた。 医者が手当してもまったく効き目なく、子供たちの深夜の遊びを知らない村人は、悪魔の仕業だと噂し始めた。 自然界に神が住んでいた時代には、神は天国、悪魔は地獄という棲み分けができていた。 自然にあった神は、寛容で人間の存在をすべて許したが、絶対となった神は冷酷だった。 自然から人間の心のなかに移住した神は、人間の心のなかに自分の居所を確保した。 しかし善悪の基準が、外から人間の心のなかに移住したことの意味は大きかった。 人間世界には幸福なことばかりではない。 近代に足を踏み入れつつあった当時、神を絶対者にしたのは、時代を支配していた強い生き物=男性だった。 良識ある人間が魔女とされ、処刑される人間が出始めたとき、正義派ジョンは子供たちの遊びに過ぎないと、公衆の面前で悪魔を否定した。 聖教一致だった当時は、信仰の世界で悪魔の烙印を押された者は、世俗の世界でも生きていくことはできない。 アビゲイルとてジョンを死刑にさせたかったわけではない。 神が自然界に存在する時代は、その解釈をめぐって異端と正当の争いだった。 本格的な作りの映画で、大きな主題を正面からとらえ、大規模な屋外セットを組んで、ニコラス・ハイトナー監督は着実に画面を展開する。 ダニエル・デイ=ルイスが、農民として鎌を使う場面では、腰が不安定で素人百姓だったが、押さえた演技で上手かった。 | |||||
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