タクミシネマ              地球は女で回ってる

地球は女で回ってる     ウッディ・アレン監督 

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地球は女で回ってる [VHS]
 何とも凄い題名だと思ったら、原題は「Deconstructing harry」である。
なぜこんな邦題がつくのか、まったく配給会社は何を考えているんだろう。

 女性遍歴の多い作家が、自分の体験を小説にして発表している。
そのため、書かれた女性たちから抗議の山という映画である。
ところがこれがウッディ・アレン自身の実体験と見えるので、興ざめなのだ。
彼はミア・ファーロと結婚していたのは有名だが、それ以外にも女性遍歴がある。
しかも今ではミア・ファーロが養女にした女の子と住んでいる。
当時、その女の子は11歳で、幼児虐待で裁判にまで発展したはずである。

 ウッディ・アレンはこの映画で何を言いたかったのだろう。
デコンと言うからには、脱構造というポストモダンの話が下敷きになっているのだろう。
ハリーと言う主人公がウッディ・アレン自身だとすれば、自分自身を脱構造化すると言うことか。
しかし、画面を見る限り、ハリーの自己正当化に終始し、脱構造化した後の新たな展開はない。

 作家という創作活動をする人間が、立派な社会人になれずに、いつまでも子供のママでいる。
それは当然のことだろうが、彼はそれを自嘲気味に描く。
老成するのは農耕社会の人間であり、情報社会の人間は年をとれないのは、彼だって判っているはずである。

 精神と現実のギャップを描いたと言うには、あまりにも手前勝手のように見える。
現実と観念を乖離させる手法は、哲学的な装いをもっているが、行き着く先はポルポトかオウムと見えている。
フランス現代思想だか哲学だかに、いまだに囚われているのは、フランスの年寄りを除けば、もはやわが国の一部とウディ・アレンだけではないか。

 映画自体は、ニューヨークのエスプリとでも言うのだろうか、実話と作中人物が交錯し、洒落た仕上がりになっている。
出演映画をうるさく選択しているだろうアメリカの俳優たちだが、この映画にはそうそうたる俳優が顔を並べている。

 ロビン・ウイリアムス、デミ・ムーア、エリザベス・シュー、ジュディ・デイヴィス、ビリー・クリスタル等々、いずれも主役をはれる人たちばかりである。
ウッディ・アレンの映画は、現代的なひねりを利かせたもので、軽いユーモアと皮肉を織り交ぜてはいるが、特別名作といわれるものではない。
にもかかわらず、なぜこれほど出演したがるのだろう。
1997年アメリカ映画。


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