タクミシネマ                  ザ ロック

ザ ロック      マイケル・ベイ監督

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ザ・ロック 特別版 [DVD]
 戦功のあった軍人に対するアメリカ軍の片手落ちな処遇にたいして、武力によって要求を認めさせようとするアクション映画である。
VX神経ガスを奪って、サンフランシスコのアルカトラス島にたてこもり、100万ドル払わないと、サンフランシスコにVXガスを撃ち込むと、アメリカ政府を脅迫する。
その金で外国へ飛び、軍人たちの慰労するという計画である。
そのリーダーには、歴戦の英雄である将軍(エド・ハリス)がなる。

 脅迫に応じない政府は、SEALを送り込んで、内部から反乱者を撹乱・鎮圧しようとした。
アルカトラス島は、かって監獄として使われていたが、現在は観光施設になっている。
増改築が繰り返され、その構造はもはや誰にも判らない。

 現在、囚人として幽閉している男(ショーン・コネリー)が、その島から脱獄したたった一人の人間で、彼だけが島の構造を知っている。
彼に特赦を与えて、彼を案内役にしてSEALが島に潜入する。
そして、神経ガス弾の起爆装置を外すために、fbiの科学捜査官(ニコラス・ケイジ)も同行する。

 SEALは簡単に罠にはまって全滅。
囚人と科学捜査官だけが生き残る。
老いたりとは言えこの囚人は、イギリスの特殊部隊の戦士で、アメリカ歴代の高官の恥部を暴くファイルを入手したため、裁判もなしで終身刑になっていた。
超人的な彼の手助けによって、無事VXガスの発射装置を解除できるのだが、そこに至るアクションが見せ物である。

 結論からいうと、悪い映画である。
つまらない映画というのはたくさんあるが、悪い映画というのは珍しい。
義のために革命をおこすことは肯定されても、自分たちの要求のために、政府を脅迫することは絶対に許されない。
しかも、自己犠牲的な精神を発揮して、それが故に正義だというのは成立しない。
地球を守るために、死を覚悟で志願する宇宙戦艦ヤマトは、まったく美しくない心性である。
2.26の将校のような義のための自己犠牲は、醜いものである。
将軍だけが、悩んでも説得力がない。
犯行の動機が、観客の共感を呼ばない。

 この映画の欠点は、暴力犯の中に小さな正義を内在させた点である。
小さくても正義をおいたら、それがいくらかでも実現されなければならない。
ところがこの映画では、最後には犯人が殺されるという、小さな正義が実現されずに終わらざるを得ない構図である。
それならむしろ、犯人は悪人であることを、徹底したほうがいい。

 この映画は、残酷な場面を簡単に作りすぎる。
ストーリーの上で必然性のある残酷さは納得するが、残酷さを見せるための残酷さは承伏し難い。
それと、キャラクターの設定が平凡である。
たくさんのお金をかけているこの映画から、いいところを見つけるのは、残念ながら困難である。
戦闘アクション映画には、いつも男性しか登場しない。
暴力の支配する世界には、女性は入れない。
囚人には女の子供、科学捜査官には妊娠した恋人を配置しているが、添え物でしかない。
1996年アメリカ映画


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