タクミシネマ                   ザ ファン

 ザ ファン    トニー スコット監督

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ザ・ファン [DVD]
 なかなか恐ろしい映画で、観念の倒置が主題です。
初めはファンがいて野球が成り立っていると思わせていて、実は野球はプレイヤーのものだとプレイヤーの本心を言わせます。
事実、ファンとは捕らえ所のない=実体のつかみにくいものです。
野球というゲームの成立からすれば、ファンの方が後であることは明らかです。
しかし、野球が単なる遊びから、エンターテインメントへと転じるときには、観念の倒置が起きます。

 言葉は物を指し示すものであり、言葉は人間が作ったものです。
だから、物の方が先に存在するにもかかわらず、言葉がないと物の認識ができない構造と良く似ています。
監督は明らかにこの倒置構造を意識しており、約束事に過ぎない機械言語が実体をあらわす現実まで見ているかも知れません。

 現実と言葉=観念の間は、工業社会まで重なっていると思われてきましたが、情報社会になるとき、両者間は無限の距離があると判明しつつあります。
この距離の間に、この映画の監督は野球とファンを重ねて見たわけで、難しい映画でした。

 ロバート・デ・ニーロが子供を救助したり、ハマーを運転できたり、ややご都合なところがあり、スランプから立ち直るのとロバート・デ・ニーロの殺人のつながりが弱いなど、映画としては超一級とは言えません。
しかしロバート・デ・ニーロが、仕事にも家庭=子供にも喪失感に責め立てられ、ファンであることが彼のアイデエンティとなっていく様子は、実に説得的です。
新しい時代の孤独を描いた映画として、記憶すべきものでしょう。
1996年アメリカ映画
 <この映画は、ビデオで見ています。>


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