タクミシネマ                  カーマ・スートラ−愛の教科書

 カーマ スートラ  ミラ・ナーイル監督

 なぜこんなに面白くない映画ができてしまうのか、本当に不思議である。
十六世紀に書かれた性の教典「カーマ スートラ」を使って、現代風に翻訳した映画を作ることはいくらでもできる。
過去のお話や原作を使って、面白く作られた映画はたくさんある。
なのにまったく面白くない。

 インドは世界でも有数の映画産出国だが、国内市場向けがほとんどで、世界市場を相手にしたものをあまり作ってはない。
この映画はイギリスとの合作だが、力のない者同士が組むと、ますますつまらなくなると言う見本である。
お金もかかっている、珍しい風景も登場する、エキゾチックな美人も登場する、エロティックな場面もある。
しかし、つまらない。
途中で退出しようとしたほどである。事実、何人かが途中で抜け出していた。

 まず、科白が陳腐で、驚きが全くない。
必然的に話の展開も平凡である。
性や性交に焦点をあわせた性交賛美なのか、美人への愛情賛歌なのかがはっきりしないことが、決定的につまらなくしている理由である。
もっともっと性そのものに迫ることはできるはずだし、性や性交はきわめて現代的なテーマである。
即物的な性の捉え方でもかまわないし、精神的な要素を重視するのでも良い、とにかく性そのものを見据えるべきだった。
恋愛と愛憎の確執とするには、「カーマ スートラ」を下敷きにする必要はない。

 人間関係の設定が農耕社会的ではなく、個人の自立が始まった近代以降の捉え方である。
農耕社会では愛情が自立できなかったから、人々は今の我々から見たら理解できない関係をも作っていたはずで、愛情だけに基盤を置くのは近代的な解釈である。
とにかくつまらなかった。
1996年イギリス・日本・インド映画。


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