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しかし、この映画の主題は恐ろしい。 「セヴン」が、おずおずとリンチの肯定へと、踏み込んだと思ったら、この映画では最初から正義を無視し、リンチを前提に展開する。 アメリカ映画は、どこまでいくのだろうか。 幸か不幸か、映画はそれほど上出来ではないので安心だが、恐ろしい流れである。 デミ・ムーア演じる主婦彫刻家が、陪審員になれるかと判事から確認されて、熟考の上で引き受ける。 物語の中では、親分が直接手を下したわけではなく、脅迫している人物が犯人なのだが、それでも殺人依頼で有罪は明白。 脅迫されている者が、相手を説得できるか否かは疑問だが、裁判では、彼女の活躍が実り、マフィアの親分は無罪になる。 それが失敗して、反対にマフィアたちが殺され、男から子供を殺すと通告される。 現在のアメリカでは、個人の意志が力の大きなものに踏みにじられ、制度がそれを救済できなくなっているらしい。 映画の冒頭で、陪審員を引き受けるかどうか、判事から確認されたときに、平凡な日々が続いており、刺激になりそうだからという理由で引き受ける。 「セヴン」では、本人の落ち度はまったくないにもかかわらず、愛するものが殺され、その復讐となる。 「セヴン」と共通しているのは、犯人を殺すことが犯人側の勝利にもかかわらず、犯人を殺してしまうことである。 しかし、むしろ問題は、良識に属する人間が、不可解な行動をおこすことである。 映画としては、二ヶ所ばかり気になった。 親友が恋人ができたと打ち明けるときに、その恋人が脅迫者だとわかってしまう安直さはいただけない。 感心した点が二つある。 デミ・ムーアは意見の異なる相手を攻撃し、しつこく自説を繰り返しているうちに、2対8の有罪をひっくり返す。 本当に陪審員たちが、ああした激論を交わすなら、専門の司法関係者たちの独断より、ずっと市民の感覚に近い判決になる。 | |||||
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