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フェノミナン   ジョン・タートルトーブ監督

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 37才の男が、宇宙からの光を受けて、突然天才になるという話しである。
自動車修理工のジョージ・マレー(ジョン・トラボルタ)は、光りを受けるとそれまでの生活が一変する。
難しい本は読むは、発明はするは、暗号は解読するは、念力が身につくは、普通の人ではなくなる。
常人とかけ離れた能力を発揮するようになるので、人気者になるかと思いきや、それまでの友達たちは気味が悪がって、彼を避けるようになる。

 映画の筋は、あまり重要ではない。
空軍の暗号を解読してしまったので、FBIに追われたりする場面は、当然のこととして想像の内だし、地震予知からUCバークレーと関係が出来たりする。
これらは、話しの舞台を提供しているだけで、主題とはあまり関係ない。
主題は、ジョージが超能力を身につけたときの、周りの人の変化と不変である。

 超能力などを身につけると、リーダーになったりしそうなものだが、状況は反対である。
親友のネイト(フォレスト・ウティカー)と、医者のドック(ロバート・デュバル)それにやがて恋人になるレイス(カイラ・セジュウィック)の三人は、以前と変わらぬ関係を保つが、多くの人たちはエイリアンを見るように、彼から距離を取り始める。

 超能力が体現される映画の前半は、やや鈍い展開ながら緊張感も高く、期待して見続けさせてくれる。
なかなか振り向いてくれない憧れの女性レイスが、美人でないのもいい。
そして、彼女には二人の子供がいるが、その子供たちが可愛いし、親の恋の手伝いをするのもほほえましい。

 しかし、超能力の原因が、脳腫瘍だったと判ってからの展開は、興味半減である。
幻想的な樹木の場面や美しい自然の風景などがありながら、脳腫瘍によって死んでいく過程は唐突ですらある。
元来が超能力は、超現実的な話しなのだから、結末を論理的にする必要はない。

 超能力に優秀な頭脳だけではなく、念力を加えたところに無理があった。
この話しは、優秀な頭脳だけで充分に成立するのだから、念力という超自然現象を入れたことによって、収拾がつかなくなってしまった。
優秀な頭脳になってから、彼が様々に展開する理論はエネルギー保存の法則が背景になっているが、それが環境保護と結びついているあたりの説得力も弱い。

 監督は、「クール ランニング」のジョン・タートルトーブだというが、「クール ランニング」のテンポの良さ、歯切れの良さがなくて、同じ監督が撮ったのかと戸惑った。
この映画は、面白い主題を見つけながら、いくつもの話しを盛り込みすぎてしまい、どれも中途半端になってしまった。

 わが国ではインテリの優先性が薄く、インテリが知性的な風貌をもっていないことが多い。
しかし、アメリカに限らず何処でも、インテリとそれ以外の人というのは、顔つきから態度まで明らかに違うのである。
医者役をやったロバート・デュバルが、知識人の雰囲気をはっきりと作り出していて上手かった。
ジョン・トラボルタが、今までとは違った役柄で、やっと演技できるようになってきた。
1996年アメリカ映画。


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