タクミシネマ           ニック・オブ・タイム

ニック  オブ  タイム
ジョン・バダム監督

TAKUMI−アマゾンで購入する
ニック・オブ・タイム [DVD]
 90分間のサスペンス映画である。
ロスアンジェルスに、アムトラックがつく。
ジョニー・デェプの演じる父親と、四・五才のその子供が降りる。
警察を装う男女の二人組に、誘拐同様に拉致され、子供を人質にしてカリフォルニア州知事を暗殺することを強制される。

 それが90分間と時間設定される。
その間に何とか子供をすくい、しかも暗殺もしないという展開に話しはすすむ。
まわりは皆、誘拐した方の味方で、誰も助けてくれない。
それでも、わずかな人の助けを借りて、何とか暗殺をせずにすむという話しである。

 まったく無関係の人間を殺し屋にしたてて、その暗殺が成功したとたんに、暗殺者をかねて手配の警備員がよってたかって蜂の巣にする。
暗殺者を殺してしまえば、背後関係がばれることはない。
という含みでこの誘拐が始まっている。

 暗殺の因果関係がつかめないからという理由だけで、無関係な人間を殺し屋に仕立てていくのは無理がある。
ヒッチコックばりの、時間設定殺人事件だが、殺し屋に仕立てられる人間の心理描写に、弱いところがある。
だいたい、州知事である女性を殺すのに、その旦那から始まってとりまきすべてがグルになっているのだから、もっと簡単な方法がいくらでもあるはずである。

 サスペンス映画を作るときは、観客が劇中におかれてもそれ以外に選択肢はない、と感じさせる必要がある。
鍵は、観客に如何に感情移入させるかであろうか。
そこでつまずいてしまうと、なかなか物語に入っていけない。
しかしそうはいっても、それは見終わっての感想で、映画の展開自体はなかなかである。

 日本でこの手の映画を作ると、すぐ嘘っぽく感じてしまうのだが、英語だからだろうか、そこそこには納得させてくれるのである。
なぜなんだろうか。
この映画など、かなり無理しているが、それでも見れるのは、ディテールがしっかりしているからか。
役者がうまいからか。 

 いくつか参考になったシーンがあった。
暗殺する人間の写真をすぐ見ないで、一呼吸おいて、州知事の顔を描いた垂れ幕が降りてくるのを待って、封筒から顔写真を出すシーン。
トイレブースの扉が、開いてしまいそうで開かないシーン。
逆光にして人の顔を見せず、それをアップで撮っているシーン。

 毎度のことながら、アメリカ映画のテンポの早さには、敬服である。
それと、まわりはみんなグルだっていうことが少しづつ明かされていき、その度に主人公ががっかりするのは、うまい心理描写である。
あれが最初から、全員グルだってわかっていたら、興ざめだろう。

 自然な演技で、ジョニー・ディップがうまい。
アメリカの俳優は、時代によってスタイルがずいぶん違う。
ロバート・デ・ニーロやメリル・ストリープのように、重厚な演技はその時代には歓迎されたんだろうが、いまや自然な演技が流行なのだろう。
1995年アメリカ映画。


TAKUMI シネマ>のおすすめ映画
2009年−私の中のあなたフロスト/ニクソン
2008年−ダーク ナイトバンテージ・ポイント
2007年−告発のときそれでもボクはやってない
2006年−家族の誕生V フォー・ヴァンデッタ
2005年−シリアナ
2004年−アイ、 ロボットヴェラ・ドレイクミリオンダラー ベイビィ
2003年−オールド・ボーイ16歳の合衆国
2002年−エデンより彼方にシカゴしあわせな孤独ホワイト オランダーフォーン・ブース
      マイノリティ リポート
2001年−ゴースト ワールド少林サッカー
2000年−アメリカン サイコ鬼が来た!ガールファイトクイルズ
1999年−アメリカン ビューティ暗い日曜日ツインフォールズアイダホファイト クラブ
      マトリックスマルコヴィッチの穴
1998年−イフ オンリーイースト・ウエストザ トゥルーマン ショーハピネス
1997年−オープン ユア アイズグッド ウィル ハンティングクワトロ ディアス
      チェイシング エイミーフェイクヘンリー・フールラリー フリント
1996年−この森で、天使はバスを降りたジャックバードケージもののけ姫
1995年以前−ゲット ショーティシャインセヴントントンの夏休みミュート ウィットネス
      リーヴィング ラスヴェガス

 「タクミ シネマ」のトップに戻る