タクミシネマ           いちばん美しい年令

いちばん美しい年齢    ディディエ・オードパン監督

 パリの高校で生活する男女の毎日を描いたもので、セリフのあるのは四・五人で、こじんまりした映画である。
金持ちの女の子クロードが、ボーイフレンドに振られたので、自殺したのかと思っていると、彼女の弟が集団いじめにあっている場面をみて動転し、半ば事故死だったという結末。

 金持ちの娘クロードは、かっこいいアクセルに首っ丈である。
高慢なアクセルに反抗心を感じてはいるが、彼とのセックスの毎日。
すでにつき合いは長そうなのに、理由もなく突然ふられ、投身自殺したように見える。
それを目撃したデルフィーヌは、アクセルに近づく。
この理由が、理解不能。しかし、アクセルはクロードの弟と肉体関係を持ったら、相手をしようと約束する。
その言葉に従って、彼女は弟と肉体関係を持つ。

 約束を守ったからといって、アクセルはデルフィーヌを呼び出す。
彼女はアクセルに抱かれるために、嬉々として彼の寮にいく。
その場で、アクセルはクロードの自殺の真相をデルフィーヌに話す。
それは、クロードの弟が軟弱だったので、裁判=集団いじめにかけていたのを、クロードが目撃したためだという。
しかも、そこで重要な役を演じていたのが、アクセルだったのである。

 話の途中で、攻守が入れ替わって、主導権がデルフィーヌへ移る。
その説明を聞いたデルフィーヌは、男のアクセルを強姦する。
デルフィーヌの体が離れると、アクセルはなんと涙を流す。
これが分からない。
しかもその直後、アクセルとデルフィーヌが肉体関係を持ったことを知ったクロードの弟が、入れ替わりに部屋に入ってアクセルを殺す。

 高校時代の子供社会の残酷さを主題にしたのかもしれないが、観念が先走って画面から主題が訴えてこない。
金持ちの優秀な女生徒クロードが、極右のアクセルに惚れるのが、パターン化している。
セックスだけでつながっているのではなく、クロードはラブレターをたくさん出すが、突然アクセルはすでに受け取ったラブレターを突き返す。

 クロードが観念的な女性だったと、言いたいのかもしれないが、彼女はセックスでは満足していると描いている。
しかし、自立したい女性のセックスが、いつも男にリードされている。
このあたりの展開が不明である。
しかも、彼女を簡単に投身自殺させてしまう。
また、女性であるデルフィーヌをその気にさせておいて、抱かない男性アクセルを許さないなど、性を仲立ちにした男女関係が男尊女卑的である。
その気にさせておいて応じないのは、女性の常套手段だった。

 その後は、デルフィーヌの愛憎半ばする復讐劇にしているが、彼女をアクセルへ接近させるのも、クロードの弟にアクセルを殺させるのも、不自然である。
1994年のフランス映画だが、やっぱり充実感がなかった。


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