タクミシネマ          ホーム・フォー・ザ・ホリデイ

 ホーム フォ ザ ホリデー
ジョディ・フォスター監督

 ジョディ・フォスターの監督第二作目である。
普通の家族の生態を、感謝祭に生家に帰省する主人公から描いている。
アメリカは個化が進み、個人がバラバラになることへの戸惑いがあって、家族を見直す動きが多い。
この映画もそうである。

 ホリー・ハンター演じる未婚の母が、職場を首になることから話が始まる。
彼女は絵の才能があって将来を嘱望されたが、画家になることができず、美術館の絵画の修復をやっていた。
それでも気に入った仕事だったが、しかし首。
気落ちしながら、帰省のために空港に向かうと、娘からセックス宣言=親離れ宣言をされる。
ますますがっかりして、空港で車から降りる。

 感謝祭なので、親の家=生家にかっての家族が集まる。
両親、お母さんの妹、ホリー・ハンター演じる長女=未婚の母、長男とその友達、次女とその旦那と子供二人である。
全員が食卓につくシーンを中心にすえ、それまでとその後の人間関係を描いている。
筋と言えるほどのものはなく、最後にホリー・ハンターが長男の友達と恋に落ちることくらいが、話と言えば言える。

 すでに退職した両親の家から、それほど離れていないところに、次女夫婦が住んでいる。
次女は才能ある長女が都会に出て行った後、両親の面倒を見ている。
親の世話を押しつけられた彼女は、少し屈折した心境である。
長男はゲイであることが、この感謝祭で両親にばれてしまう。
そして、母親は自分の妹が自分の旦那に気があったと聞かされて、彼女は頭を抱えてしまう。

 いまや家族たちは、かってのように結婚しても両親の家のまわりに住み、和気あいあいと暮らしてはいない。
それぞれに自分の生活を求めて、遠く離れて住んでいる。
利害も関心も共有していない。
だから、血縁の家族と言う理由だけでは、仲良くやって行けない。
映画は、何かとぎくしゃくするのが現代の家族である、という事実をまず見せる。
しかし、家族は最後のところでつながっており、愛し合うものだと言うのが、ジョディー・フォスターの主張である。
たしかに、そうであって欲しいし、多くの家族はそうだろう。

 しかし、本当にそうだろうか。
家族の愛情を支えてきたのは、いったい何だったんだろう。
親子とか兄弟といった血のつながりは、決して切れるものではないと考えられてきたが、それは人間が土地と結びついていたからである。
土地の上に生まれ、土地を耕し、土地によって生活してきたのが人間である。
土地を離れてどこへも行けない中では、血縁の家族で生活することが適していた。
だから、家族愛があった。
そのため農耕社会では、夫婦愛より親子愛のほうが強かった。

 工業社会になって人間の生活が土地から切れたために、重心は親子愛から夫婦愛へと移った。
つまり大家族から、核家族へ移ったのである。
アメリカの映画だからここでも、家族の核は両親の夫婦愛として描かれている。
現在のわが国で、こうした映画を作ったら夫婦愛が中心におかれるだろうか、それとも親子愛だろうか。
今や親子愛が夫婦愛に優先することはないが、戦前だったら、夫婦より親子が中心になった可能性は充分にある。
現在だと、夫婦と親子が同じウエイトで描かれる可能性もある。
それとも、母子密着が本当の姿だろうか。

 工業社会の終焉を迎えて、どのような人間関係ができあがって行くのだろうか。
個人が個人へと直接つながるものだとすれば、宗教的な形になるかも知れない。
映画としては、可もなし不可もなしである。
テーマは良く判るし、俳優だって下手ではない。
筋の運びだってそつがない。
しかし、平凡なのである。
まず、テーマを直接的に展開し過ぎた。
30分くらい切り詰めれば、いい映画になったかも知れない。
1995年アメリカ映画。


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