タクミシネマ           ケロッグ博士

ケロッグ博士    アラン・パーカー監督

 なんとも不思議な映画である。
科学批判とか技術批判としてみるべきなのか、単なるお笑いとしてみていいのか、ちょっと判断に惑う。
「ミッドナイト エックスプレス」をとった監督の、コカコーラの誕生が落ちとなる実話をもとにしたブラックコメディーである。

 主人公ケロッグ博士とは、コーンフレークの発明者として知られるアメリカ人だが、生きている時はむしろ健康運動の推進者として有名だったようである。
1907年頃、アメリカの東部に、健康推進運動の施設を作り、そこに全国から賛同者を集めていた。
彼には独特の哲学があり、菜食、禁酒、禁セックス、浣腸と言った禁欲的な生き方が、健康を保つと主張していた。同時に、数多くの養子をとって育てていた。

 この映画ではディテールを言い出したらきりがない。
実に細かいところまで、よくできている。
1907年という時代設定が、すでにわが国の時代劇のようなセットを要求している。
時代考証をやる人がいるのだろうが、こうしたテーマの映画に、あんなにお金がかけられるのが不思議である。
アンソニー・ホップキンズやブリジット・フォンダなどの有名俳優や大勢の出演者を並べるには、お金がかかっただろうと思う。
ブラックなユーモアーに、お金をだすスポンサーがいることに驚く。

 この時代の映画を見ると、きらびやかに着飾って裕福に生活している影には、貧乏な人がたくさんいたんだろうと、いつも思ってしまう。
ロビーで楽器をひいている人にしても、馬車の御者にしても、我々日本人からみるときらびやかな格好をしているので、すべての人がお金持ちにみえてしまうが、貧富の差はすごいものがあったのであろう。

 この映画のテーマを、科学批判、健康批判などと、あれこれいうことはできる。
しかし、そうした批判としてみるより、ケロッグ博士という偉人の人生としてみたほうがいい。
ケロッグ博士には、アンソニー・ホップキンズが扮していたが、「羊たちの沈黙」とはまったく異なった顔や作り、まるで別人のようだった。
演技とはいえ、驚いた。
1994年アメリカ映画。


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