タクミシネマ           百貨店大百科

百貨店大百科   セドリック・クラピッシュ監督

 経営不振になったデパートを立て直すために、新しい社長が任命される。
彼は社員のコミュニケーションを大切にし、経営再建のために様々な手をうつ。
ぬるま湯につかっていた以前の人間関係はギクシャクするが、おかげで経営は上向き、めでたしめでたしとなる。
かと思いきや、実は彼の就任前に会社の売却が決まっており、売却価格をつり上げるために、経営改善させたのであった。
結局、全員が解雇となって、映画は終わる。

 経営が悪化してくる会社は、どこも同じである。
勤務時間中に社員たちが勝手なことをやっている。
物を売ろうとする意欲がない。そうした展開をおもしろおかしく見せるが、ほとんど見たことばかりで、新しい驚きはない。
新社長の方針は日本的な経営とよく似ており、全員解雇の結末からすると、日本的な経営に対する皮肉かと思えなくもない。
フランスではヒットしたらしいが、この程度のコミックで笑えるとは、フランス人は本当に後進国化してしまったようだ。

 新社長に忠実で、経営再建に協力する人たちが、古い人たちに虐められたり、恋愛関係など様々な人間模様が散りばめられているが、古い文化の桎梏は厳しいものがある。
フランス映画に、新たな展開が見えてこないことはこの映画でも変わらない。
しかし、この監督は平凡な風景を飽きさせずに見せる。
これはなかなかの技量である。

 映画の中でも、個人主義が徹底していることは気持ちいいほどである。
おそらく個人主義は監督が意図して描いているのではなく、フランス人たちの体臭となっているものだろう。
服装、生き方など本当にばらばらであるが、アメリカほど派手ではなく、地味ながら個人であることが彼等の地になっている。
デパートに勤務する普通の人たちが、普通に登場するのは、自然な感じである。
我が国のデパートと異なり、そこで働く人たちが年齢と言い人種と言い均質ではない。

 賢明に努力し、初期の目的を達成しながら、会社が身売りされていく。
しかも、それが戦略的な意図のもとに行われていたという結末は、少し苦い顛末ではある。
しかし、人情が絡んだ終わり方が、なんとも情報社会からは遠い感じである。
我が国と同じレベルなのかとも思う。
1992年フランス映画。


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