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同じ監督が撮った「スモーク」の後日談であろうか。 俳優たちは、同じ顔ぶれであるが、今度はハーベイ・カイテルが写真をとらない。 大時代状況を雄大に描いたり、手に汗を握る活劇ではない。 何気なく話が進み、筋のあるようなないような、こうした平凡な映画があってもいい。 「スモーク」の時も感じたが、登場人物が実に日常的である。 普通に、どこにでもいる人たちばかりで、しかもみんないい人でありながら、なぜかごちゃごちゃとなりながら、日々が過ぎていく庶民の毎日。 ハーベイ・カイテルに共感できたシーンがある。 彼は、子供を警察に突き出すことを主張し、女性と対立する。 ブルックリンでは、子供のこそ泥といえども、泥棒を追いかけることは命がけだろう。 たしかに、警察に突き出すことがいいとは限らないが、社会の規則に反した行動をとったら、罰があって当然ではある。 この映画は、進む時代に押しつぶされていく庶民たちの生活を、哀惜と共感を持って描いている。 古き良き時代には、智恵遅れの人間でも、生きていく場所があった。 情報社会へと進む社会の中で、追い立てられすりつぶされていく庶民たちの、必死でしかもすこし悲しく生きる姿を、監督は温かい目でみている。 「スモーク」では、タバコを吸うことを核に話は展開したが、この映画ではそれがないぶん話が散漫になっていた。 小津にしろ黒沢にしろ、農耕社会から工業社会への転換期に、農耕社会の側から新たな時代を照射したのではないだろうか。 わが国では、いま工業社会のまっただ中にあり、異なった価値観が自覚できない状況なので、鋭い映画が作れない。 時代の転換点にあって、過ぎ行く時代から来るべき時代を描くことは、どんなところでも有効性がある。 農耕社会から工業社会を見る視点が、人間の本質的な部分をとらえ得る。 | |||
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