タクミシネマ           アルチバルド・デラクルスの犯罪的人生

アルチバルド・デラクルスの犯罪的人生
 ルイス・ブニュエル監督

 ルイス・ブニュエルによって、1955年につくられた映画である。
もちろんモノクロで、人物の動きがやや早く、時代を思わせる画面であるが、映画それ自体は現代物に比べて、何の遜色もなく楽しく観ることができる。


 貴族の家に生まれた男の子が、両親から甘えっぱなしで育てられる。
しかも、実際の躾は家庭教師から受ける。ある日、両親が劇場に出かけるので、留守番をさせられるのに、彼は臍を曲げた。
そこで、母親は留守番をすれば何でもあげましょうという。
そこで彼は、オルゴールが欲しいといって、それを手に入れる。
そのオルゴールを鳴らすとき、彼は誰かが死ぬと思うと、内乱の流れ弾にあたって、家庭教師が眼の前で死んでしまう。

 成人しても、彼は殺人幻想から逃れられず、身の回りの人が死ぬと、それは自分が殺したせいだと思い始める。
映画は飛んで、成人した彼が病院に入院している場面になる。
そこの看護婦が、彼にからかわれて慌てて廊下に逃げ出し、開いていたエレベーターの扉から転落死する。
その事故のために参考人として、彼は判事の調べを受ける。
そこから彼の殺人幻想の回想シーンへと、映画は転じていく。

 革命のどさくさで、オルゴールは彼のもとからなくなってしまった。
しかしある日、骨董屋で老人とその愛人のような二人組が、そのオルゴールを買うのを、偶然に見た。
買おうとしていた二人組を押さえて、彼はそのオルゴールを手に入れる。

 彼が想いを寄せていた女性は、実はある建築家と不倫の関係を続けている。
1955年当時とすれば、婚姻外の肉体関係はご法度だった。
建築家は、離婚して彼女と結婚しようとするが、カトリックのスペインではそれが出来ない。

 不倫の関係に耐えられなくなった彼女は、主人公のプロポーズを受けて結婚する。
結婚式の直前に、彼女が不倫していることを知った彼は、その場で射殺しようとするが、それでは単なる殺人だとそのまま結婚する。
そして、結婚してから射殺しようとするが、その前に愛人だった建築家に結婚式の場で射殺されてしまう。

 彼のまわりで起きる死者の発生は、すべて自分の責任だと思いこんでいる、男性の告白映画である。
そのあいだに恋愛劇がはさんである。
オルゴールを買おうとしていた女性と、その後偶然に会って、女性のほうから誘われる。

 不思議な女性は、アメリカ人の通訳をしたり、マネキンのモデルになったりしている。
その女性と付き合おうとするが、軽くいなされてしまう。
様々なことがあり、あのオルゴールが悪いのだと感じた彼は、オルゴールを沼に捨てる。
すると、いなされたはずの女性が現れて、ハッピー エンドとなる。

 おそらくオルゴールは、母親から自立できない象徴だったのだろう。
それを捨てることによって、大人になったということだったのだと思う。
しかし、この時代の映画は、本当に美男美女が多い。
とくに花嫁になる女性と不思議な女性は、すこぶる付きの美人で、しかもスタイルがいい。
また、当時は、男は男らしく、女は女らしく、その性的な魅力を一杯に発散させていた。
ファッションにしても、マナーにしても、古き良き時代だった。
1955年メキシコ映画。


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